あれこれ
第35号 2007.11.22:「若き父親へ」
若き父親へ
いまあなたの家庭は、我が子の障害という未曾有の危機に直面している。この危機に際して、あなたは我が子を救うため、一世一代の戦いを挑まなければならない。
幸い道はある。まだ踏み固められていない険しい道ではあるが、それだけあなたがその能力を発揮できる余地は大きいだろう。
あなたには仕事があるだろうから、現実の療育はほとんど妻の役目となるだろう。あなたに求められているのは、現実を冷静に見据え、情報を収集し、要所要所で的確な判断を下すことである。
あなたの妻は悲しみと不安に震え、慰めを必要としている。あなたは男らしい冷静さとやさしさで、しっかりと妻を支え、励ましてやらなければならない。
あなたが戦いに勝利することができるかどうか、それは誰にもわからない。しかしあなたに求められているのは、戦いに勝つことだけではない。勝つにせよ、負けるにせよ、戦いの前にひるむことなく、常に戦いの先頭に立ち、最後まで他の者を励まし続けること。それこそが、あなたの家族があなたに望んでいることなのだ。
いまのあなたは、我が子の回復だけを願っていることだろう。しかしあなたにはまだわからないだろうが、回復しなかったからと言って、この戦いは必ずしも敗北ではないのである。指示に従えること、言葉を引き出すこと、身の回りのことが一つでも多く出来るようになること、それらは皆、後から振り返れば、立派に戦うに値することなのだ。
戦いを回避して、悔いを残してはならない。失うことを恐れるな。わが家のために戦う静かなる勇士となれ!
藤坂龍司