発達障害とは

自閉スペクトラム症(ASD)は、発達障害に含まれます。
発達障害、とは、なんでしょうか。
日本では、発達障害者支援法(最終改正2016年)という法律で定義されています。
以下に引用します:
第二条  この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。(下線、筆者)

知的障害は、発達障害に含まれるのでしょうか。

自閉症であれば、知的障害を伴った場合、発達障害に含まれると解釈できます。
知的障害のお子さんに自閉症の特性があれば、それを理解して支援する必要があります。 
自閉症のない知的障害の場合は、知的障害者福祉法、という別の法律の対象になります。
この法律を踏まえ、福祉や教育では、自閉症のない知的障害を、発達障害に含めません。
それに対し、医療では、自閉症のない知的障害も、発達障害に含めて考えます。
福祉や教育の方と、医療の方と、これでは話が嚙み合わないのではないかと、お感じになるかもしれませんが、こういう立場の違いがあることを、お互いに知っていればよいと思います。

神経発達症、という言葉は、発達障害と同じ意味でしょうか。

「発達障害」という言葉は、今日の日本では、主に行政、福祉や教育の分野での言葉です。
医療でも、普通に「発達障害」の言葉を使います。
だいたい同じ意味ですが、医療における「発達障害」は、知的障害も含めて考えることが多く、少しだけニュアンスが異なります。
最近では、医学の分野で、発達障害を、神経発達症、と呼ぶことが提唱されています。
医学で使われる診断基準に、 アメリカ精神医学会の改訂診断基準(DSM-5, 2013年)があります。
この診断基準の中で「Neurodevelopmental Disorders」という呼称が提案されています。
「Disorders」ですから、障害、と訳しても良いわけです。
この言葉を、神経発達障害、と訳すより、神経発達症、と訳しましょうと、
日本精神神経学会という日本の医学の学会で決まりました。
同じ意味でも、「障害」という言葉を使わず「症」というほうが、やさしい感じがします。
自閉症スペクトラム障害を、自閉スペクトラム症と呼ぶことがあるのも、同じことです。
なお、医学で使われる診断基準には、2019年に改訂・承認されたICD-11診断基準(WHO)というものもありますが、
こちらもDSM-5と同様で、神経発達症に、知的発達症、自閉スペクトラム症、ADHDを含んでいます。
(文責 藤中秀彦 国立病院機構新潟病院)