自閉症とは
自閉症とは、なんでしょうか。
自閉症は、正式な診断名は「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」と言います。通常低年齢で発現する発達障害の一種で、①社会的コミュニケーションの障害と、②行動、興味、活動の限定された反復的様式、を特徴としています。
Wikipediaで「自閉症」を調べると、「古典的な、狭い意味での自閉症」を指していることが分かります。
これは1940年代からの「カナー型自閉症」のことで、知的な遅れ、言語発達の遅れを伴う自閉症のことです。
現代の、軽い症状も含めた、広い意味での新しい診断名は「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」と呼ばれます。
「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」の間にある、「/」(スラッシュ)は、どういう意味ですか。
日本語の新しい診断名を2つ、併記したものです。
DSM-5(アメリカ精神医学会)の診断基準改訂(2013年)で、
「Autism Spectrum Disorder (ASD)」という名称になりました。
日本語に訳すと「自閉症スペクトラム障害」です。
これをうけて、
日本精神神経学会は新しいガイドラインを発表し(2014年)
日本では「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」と、あいだにスラッシュを使って、2つ並べて書くことになりました。
ガイドラインに、以下の記載がありますので、引用します:
児童青年期の疾患では、病名に「障害」とつくことは、児童や親に大きな衝撃をあたえるため、「障害」を「症」に変えることが提案された、
新たに提案する「自閉スペクトラム症」という病名の横に、旧病名をスラッシュ(/)で併記し、「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」と記載することにした。
スラッシュで2つ並べて、どちらでもいいのですが、やさしい感じのする方を前に書く、というくらいの意味です。
「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」は、広汎性発達障害、と同じでしょうか。
以前の「広汎性発達障害」が、2013年以降は「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」と称されることになりました。ただし、レット障害は除かれており、少し違います。
古い診断基準(DSM-IV)の「広汎性発達障害(PDD)」のなかの項目に、「自閉性障害」というのがあるので、混乱しそうです。
古い診断基準では、
言語発達の遅れのあるものが「自閉性障害」、言語発達の遅れのないものが「アスペルガー障害」で、
「自閉性障害」のなかに、知的発達の遅れを伴う「古典的自閉症(カナー型)」が含まれました。
DSM-5基準では、この区分けはしません、
明確な線引きはできないし、連続体(スペクトラム)と考えるからです。
広汎性発達障害やアスペルガー障害(症候群)という言葉自体は、
発達障害者支援法という日本の法律の中の文言として、現在も残っています。
今後、医学的に、新しくそう診断されることはありませんが、
以前診断された方を、否定するほどのものではなく、
それはその診断のままでよいのだと思います。
「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」は、どのように診断されますか。
DSM-5診断基準(2013)に基づいて診断されます。
現時点では、自閉スペクトラム症は、血液検査データや、MRIなどの画像検査、計測値、などによって、数値的に診断することができません。
診断基準に従いますが、判断は難しいです。
例えば、診断基準のなかに、「興味、情動、または感情を共有することの少なさ」と書かれています。
少なさ、ということを、誰がどう判断するのか、
子どもの年齢や知的発達の程度によっても、標準が違う可能性がありますので、簡単ではないということです。
専門家による(できるだけ丁寧な)問診、各種の発達・心理検査、そして、遊びなどの行動の直接観察、が大切になります。
診断基準ですが、2013年のDSM-5改訂以降、旧診断基準の以下①②③の、①②が、新しい基準では、一つにまとめられました:
①社会性の障害
②コミュニケーションの障害
③行動、興味、活動の限定された反復的な様式
↓
①社会的コミュニケーションの障害
②行動、興味、活動の限定された反復的な様式
旧診断基準(②コミュニケーションの障害のなか)にあった
「話し言葉の発達の遅れ、または完全な欠如」という記載は、
新しい診断基準からはなくなりました。
これは、広い意味の「自閉スペクトラム症」の中に、ことばの遅れのないタイプの高機能自閉症(以前は「アスペルガー障害」と呼ばれていたもの)が含まれることになったためです。
実際のところ、「言葉の発達の遅れ」のために医療機関を受診するお子さまが多いだろうとは思いますが、
自閉スペクトラム症の診断のために重要なことは、「言葉の発達の遅れ」ではない
(ジェスチャーなどの非言語的コミュニケーションが障害されていること、の方が重要)ということになります。
(まとめ)
自閉症とはなにか、ということで、主に定義や診断について書いてきましたが、
実際のところ、診断すること自体には、それほど厳密にこだわることなく、少しゆるやかなくらいでよいのではないかと、私個人は思っています。
最近の日本においては、
自閉スペクトラム症と診断される、もっとも高頻度の年齢は、3歳0ヵ月です。
また、平均は7.3歳で、10歳以降ではじめて診断される方もいます。
診断は難しいことも多いですし、
診断がはっきりつかなくても、早期療育自体は可能です。
例えば1歳6か月健診で、スクリーニング検査(M-CHAT)陽性のお子さん、
あるいは、2歳時点で、自閉スペクトラム症が疑われるお子さん、などは、
この時点で、自閉スペクトラム症の診断がつかなくとも、療育に入ることが可能になっています。
(文責 藤中秀彦 国立病院機構新潟病院)