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10月号
11月号
●▲■♪つみき通信11月号♪●▲■
平成14年11月7日 発行
急に冬がやってきて、寒さに震えてますが、皆様いかがおすごしですか?
では、今月のMLダイジェスト紹介いたします。
【生体リズムについて】
昼間、如何に目を覚ますか、ということと同時に、リズムがとても重要だと思います。以前のメールにもありました
が、「目をさませばいいってもんじゃあない」確かにそうで、生体リズムが重要なんですね。
自閉症の方は、お父さん、お母さんが100点満点で接しても、なかなか、リズムがとれません。
それは、生後4ヶ月までに睡眠覚醒リズムを形成する脳幹の障害を持っているということを示しています。
リズムを作るのは、目の奥にある視交叉上核というところで、そこに、光からの刺激が神経を伝って入るので、光が
重要です。だから、早起きが重要です。
そして、夜は、目からも その他からも色々な信号が松果体というところに伝達され、メラトニンを分泌するように
しています(とても簡単に説明してます)。
それから、昼間に如何にはっきり目をさますか、ということは、単に目がさめているだけではだめで、何か集中して
楽しそうにうれしそうに、目が覚めていないとだめなんですよね、これが難しい。
私達は、皆さんが書かれている、1歳半位から見られる、中途覚醒(夜間起きて遊んでしまう)に、l-dopa少量療法
を行い有効性を認めています。これは、不安定なレム期を安定させているからです。
皆さん、大変だと思いますが、どうぞ頑張ってください。
ビタミンBは、ドパミンを増やす働きをすると思いますので、前頭葉が発達しきる15歳位まで使っても良いのでは
ないでしょうか。いつやめるのかは、つまりなぜ始めたか、と思います。それがはっきりしていないので、そのよう
な疑問が残るのだと思います。これから始める方、なぜ、始めるのか、をきちんとしましょう。
「保護者の責任」も良いのですが、一緒に考えていきたいですね。 星野恭子
【独り言について】
ヴィデオをやめたら独り言が減ったという話を何度も聞いています。現時点では、絵本や玩具で遊ぶほうが良いと思
います。長期的には、以下のような方法も試してみると良いでしょう。
1. 家庭用のヴィデオカメラで製作した教材を見せる。
実際にお子さんが生活している場所で、お子さんの視点と同じ位置にカメラを設定して撮ります。
一と向かい合っての会話の練習など、お子さんが言うべきセリフを大人がナレーションで入れます。
できるだけ、お子さんの目に映る画像に近いものにすると良いそうです。
(これはドナさんが薦めている方法です。)
2. できるだけ家事の手伝いをさせる。
ABAをしていない家庭でも、この方法で成果を上げたという話は何度か聞きました。
相互のやりとりになっていなくても、誰かと一緒に何かをするという経験は非常に大切です。
一人でできることでも、二人でやった方が楽しいという体験を多くすることが目標です。
3. 協力者を探す。
本格的なABAができなくても、子どもだけの集団に入っていく前のステップとして、複数の年長者が交替で相手
をすることは大切です。ABAも一人で頑張ると必ず燃え尽きます。
4. お父さんにもできるかぎり協力を要請する。
子どもが幼いときに時間を共有できない父親は必ず後悔します。男たちが家族を置き去りにして仕事に専念すれ
ば少子化の悪循環は進むばかりです。職業人として活躍できる期間は何十年かありますが、父親としての期間は
数年だと思います。お子さんが幼い時期を逃したら、それもほとんど無いでしょう。夫婦の仲が険悪になるほど
強く要求する必要はありませんが、あきらめず、しつこく、できる範囲での協力を(早く帰ってくることを)要
請して下さい。 <R.I>
【就学前健診】
去年11月の就学前健診は、娘にわたしが付き添って、でました。
その前から、教育委員会のかたには会って話し合いを続けておりましたので、娘が私といるときにどういう状態で、
他の子に対して危害を加えない、ある程度は集団のルールを守れる、(さらに、笑顔がかわいい)などを、まわりに
アピールするためと、私自身が、同年代のほかの子供たちの様子を見てみたいという理由からです。
視力検査、聴力検査はできませんでしたが、「以前、専門医に診てもらって大丈夫だと言われてます。」といって、
パスさせてもらいました。
待ち時間、他の子からの反応など、なかなかいい感じで、そのとき、となりにいて、娘に興味をもってくれた女の
子が、今同じクラスにいて、お互いに楽しそうに遊んだりしています(ほとんど、遊んでもらってる・・)。
普通学級(通常学級)に入れたいと考えていらっしゃるかたは、準備運動として就学前健診にお子さんを参加させ
てみても、いい練習になるのではないかな、と思います。健診時の親の付き添いについては、教育委員会に話せば、
たぶん、学校側に伝えてもらえるのではないかと、思います。
わたしは、自宅で、教育委員会のかた(二人)と2時間にわたるバトル(その間、子供のトイレにたったり、台所
をちょろちょろされて連れ戻しに行ったり、忙しかったです)のあと、「失礼なことを申しあげて申し訳ありません
でした・・」と言っていただきました。
わたしも「いえ、大丈夫です。 私も本音でお話させていただきますから。 これからも、よろしくお願いします。」
と答えました。
その時、強行な立場の方のかたが、こうおっしゃったのです。
「そう言っていただけて、よかったです・・。 一度お会いして、もう二度と来るな!とおっしゃる親御さんが多い
ので。 ・・・では、また、来させてもらいます!」
と、やる気満々で帰っていかれました。
家を片付けるのは大変ですので、それからは、主人が市役所に出向いていって、毎回30分くらい、冷静なバトル
をくりかえしました。(私だと、熱血バトルになってしまうので、主人に行ってもらって助かりました)
教育委員会のかたも、鬼ではありませんので、教育委員会の立場で動いている部分もあると思います。
親よりも教育委員会が偉いということは無いと思いますので、臆することなくご自分の意見を述べたほうがいいと思
います。「お子さんのためには何が一番大切か、よく考えて」というのが常套句のようですが、わたしは、今までそ
の台詞を、いろいろなところで何度もききました。
「親として一番いいとおもっているから、そう言っているんです」と答えたこともあります。
最終的には、親が判断してくれという意味だと思って、「この方法がいいと思いますので、やらせて下さい」と、教
育委員会を説得するのも、ひとつの道だと思います。
最終的に通知を受けとるまでは(たしか1月最終日)、まだ決定ではないはずですので、就学については、最後まで粘
ってみて下さい。 親よりわかっている教育者なんて、いないと思いますよ。 <H.K>
【催し物紹介】
日程は過ぎているものもありますが、こういうものもありますという情報です。
①地域限定情報ですみませんが、催し物のご案内です。
事務局のはぐくみ塾は知的障害児等のための塾のようです。
会場が東京湾アクアラインを通って、横浜から高速バスで55分+路線バスで20分・・・うーん、遠いですねぇ。
(詳しくは最後の会場案内HPをご覧下さい)
数年前保健婦の研修会でかずさアカデミアのDNA研究所を見学したことがあるのですが、なかなかすごいところ
でした。自閉症治療もDNA研究で可能になる時代がくるのだろうな・・・等と思いつつ見てきました。
*塾とコンサートのHP:http://www.escor.co.jp/hagukumi/event.html
このゆびとまれコンサート ~ 音 楽 を あ そ ぼ う
音 楽 を 聴 こ う ~
神子 真由美 DOLCE MUSIC SCHOOL主宰: http://www04.u-page.so-net.ne.jp/wb3/piano/
■2002年11月17日(日)(開場;13:00、開演;13:30、終了予定;15:00)
■かずさアカデミアホール 2F会議室
■全席自由 1200円 (前売り1000円)
■チケット販売-----はぐくみ塾 かずさアカデミアホール
お問合わせは事務局へどうぞ
主催 このゆびとまれコンサート開催実行委員会
事務局 はぐくみ塾 鈴木敏子:君津市坂田356-1 電話0439-55-1147
後援 (株)かずさアカデミアパーク
* 会場のHP:http://www.kap.co.jp/arc/access.html
<ひろぴー>
②今月の3日から6日(台風の後で真夏日でした)、息子とJR・JAS労組主催の障害児の為の「旅のプレゼント
in東京」に参加しました。公に大きく募集していないらしく、たまたま月2回通っているクリニックで募集を知りま
した。その時々で開催地が代わり、去年は確か東京→北海道だったそうです。
JRの職員の方がひとりひとりにボランティアスタッフとして付いてくれます。
片道が寝台車(16時間)で、もつかな・・・と迷いましたが大人1万円、子ども5千円と、ディズニーランドに惹
かれて(^^;;思い切って行ってきました。スケジュール的に忙しかったのですがスタッフの方の熱意が伝わって
感謝感謝の旅でした。息子はミッキーに会えた!!と大喜びでした。ずーっとしゃべりっぱなしで途中私も切れまし
たが(苦笑) 残念ながら後2回(今回は第8回。5歳児以上)で終了してしまうそうです。 <S>
【GPL検査15%割引中】
GPL(グレートプレインズ研究所(米):生物学的治療法を研究する会社)の検査が、大阪在住会員さん
のご尽力により、しばらくの期間、つみき会員に限り、15%割引で受けられるようになりました。
ありがとうございました。
この機会に検査を受けられたいと思われる方は、以下の内容を明記の上、坂田まで葉書等でお申込
下さい。
1:受けたい検査項目 ペプチド検査、尿メタル検査のみか、追加項目がある方は書いてください
(血清が必要な場合は採血をしてくれる医療機関の協力が必要です)
2:テープオンバッグの必要有無(トイレ訓練されてない子供のための尿採取袋)
3:保護者氏名、被検者氏名年令性別、郵便番号、住所(都道府県から)、電話番号、メールアドレス(あれば)
申し込み先:坂田順子(住所は封書裏をごらんください)
申込締切:出来るだけ11月22日(金)までに (思案される方はご一報ください)
ペプチド検査、尿メタル検査以外にも受けてみたいが資料をお持ちでない方は、
http://www.greatplainslaboratory.com/japanese/testkits.html をご覧ください。
また主な検査の内容は、GPLの担当の方からのメールを、以下に転記しますので、こちらも参考にしてください。
・ 『有機酸検査』は、消化器系で増殖している微生物、特に悪玉細菌の生成物の量を測る検査です。
自閉症児は過去に抗生物質を投与されており、それが細菌の増殖を引き起こし、生成物は代謝において体の生化学
的な機能や脳に影響を起こすことが知られています。
・ 『酵母菌検査』は、検便で悪玉細菌である酵母菌の有無を調べます。そして、どの抗真菌剤が効果的かを培養す
ることにより見極めます。
この2つの検査は「コンボ(検査名)」として受けることができます。
・もう一つの代表的な検査は『ペプチド検査』です。
自閉症の子供は牛乳や麦に含まれるたんぱく質(ペプチド)を消化できない先天的異常性があり、尿検査でこのペ
プチドの量を測ります。通常以上検出された場合は、ペプチド問題があることになります。
このペプチドは、「リーキーガット症候群」とよばれる腸漏れによって体内を循環し、脳に流れこみ、それが自閉
症的行動を引き起こすと言われています。
このペプチドの異常性が検出されなくても、ほかの食物にアレルギーがあるお子さんもいます。
その食物を食べることで行動的異常性が現れるので、『食物検査』も有効です。
ただ、これは血液検査で、血清を採取していただかなくてはいけません。個人ではなく、医療関係の方に受託する
のが一番ですが、担当医は医者にこの検査を受ける旨を伝えて、血清採取に協力してもらえるかどうかの確認を取
る必要があります。
・ほかには『メタル検査』があります。水俣病などのように、金属性毒素は体の各器官に大きな影響を与えます。
(水銀、アルミニウム、鉛など)
以上、簡単な説明ですが、参考にしていただければ幸いです。
検査内容詳細はパソコンHPでご覧になれますが、パソコンをお持ちでない方で、詳しい内容をお知りになりたい方
は坂田までご連絡ください。
今回の検査金額は、調査出来ていなくて申し訳ありませんが、2001年8月の資料によると、例えば、
有機酸テスト:26400円、酵母菌テスト:18450円、コンボ(有機酸と酵母菌のテストのセット):31980円
ペプチドテスト:12177円、メタル尿テスト:19680円、メタル血液テスト:20910円・・・・といった感じでした。
参考にして下さい。
ちなみにつみき会員内で、申込の多い検査は、ペプチド・尿メタル。コンボを申し込む人もちらほらだそうです。
また、これは強制ではないのですが、今後のフォローの為に、検査結果は、一部はご本人に、もう一部はつみきの
会に届けていただくという形をとることを考えています。検査申込される方で、この、「結果をつみきの会にも保管
する」ということを希望しない方は、事前にお申し出ください。会に保管はしません。
【本の紹介】
娘が通うなかよし学級で使っている音の出る教材を紹介します。(過去に紹介されているかもしれませんが)
うたって かいて けせるえほん① 音のでるえかきうた
絵/くすはら順子・上村千栄・ようふゆか 歌/坂本裕子
編集・制作 株式会社みっとめるへん社 発行所 株式会社ポプラ社
上記のホームページ:http://www.poplar.co.jp
のベストセラーから探すの29位にランクされています。(9月10日~9月16日の週間ベスト30の中)
他にも遊び&教材になりそうなものもありました。 <M.S>
【お知らせコーナー】
<神戸11月定例会のお知らせ>
神戸11月定例会を下記の要領で開きます。
日時:11月24日(日) 13:30~17:00
場所:JR神戸駅前クリスタルタワー6階創作工房AB
参加費:1人ないし1家族500円
※今後の神戸定例会予定
・12月:12月15日(13:30~17:00) クリスタルタワー4階創作工房AB
・1月:1月19日(13:30~17:00) クリスタルタワー4階創作工房AB
<東京11月定例会のお知らせ>
東京11月定例会を下記の要領で開きます。
日時:11月30日(土) 13:30~17:00
場所:恵比寿駅東口施設(電話番号;03・3473・5320)
JR恵比寿駅の西口(1階)の改札口を出て、右手にある駅に隣接している「ベッカーズ」
の前を通り、車道に面している道を右に折れ、数十秒歩くと右手にあります。
(東口施設なのに、西口から行った方がずっと近いです。)
駅の改札口から30秒ほどで着くと思います。
内容:般化訓練・集団プログラム
会費:1000円
以上つみき通信11月号でした。
来月もよろしくお願いします♪
<編集担当 坂田順子>
12月号
●▲■♪つみき通信12月号♪●▲■
平成14年12月7日 発行
皆さんこんにちは。先月、会員のH.Kさんが米ヴァージニア州で開かれたABAワークショップ
に参加され、そのレポートをつみきメーリングリストに寄せてくださいました。そこで今月はこのレ
ポートを中心につみき通信を作成させていただきました。H.Kさんには、お忙しい中私たちのため
に報告文まとめてくださったこと、感謝いたします。
【米ヴァージニア州のABAワークショップで学んだこと】
今月11月中旬に米ヴァージニア州にある自閉症児専門学校(私立)で親や教師を対象としたABAワークショップ
が4日間あり、それに参加してきました。
この学校は自閉症児をもつ親達により6年ほど前に設立され、現在生徒は17名(3歳から10歳くらい)、同数以
上の教師がいます。プログラムを組んでいるのは、行動分析の分野で修士号をとった後、長年ニュ-ヨ-クで自閉症
児の教育にあたった後、ヴァージニア州にうつってきた先生で、その方が今回のワークショップの講師です。
4日間のうち、2日間はABAの理論的な面を中心に、あとの2日間は実際の授業を見学した後の質疑応答、具体
的なデータの取り方や個別の対応方法など(おまけに新しい課題の前後にペーパーテストがあるので気がぬけませ
ん)、とても内容の濃いものでした。
特に、実際に自閉症の子供達と教師の1対1のABA授業風景を4日間に渡り、見ることができたのはとても勉強にな
りました。大変オープンといいますか、中にはパニックをおこして暴れる子もいたわけですが、それでも、最後まで
ABAをやり遂げます。私も同じ部屋にいて、最後まで見学させてもらいました。
こう書くと厳しい雰囲気を想像するかも知れませが、そこの子供達がみんな可愛いんですよ。
自分の子供たちとだぶるからかも知れませんけど、本当にみんな可愛いです。
子供達のプログラムの中には必ず、’TALK’ といって、誰かに自分から話かけるものが含まれているのですが、一日
の内に何回かは、’How are you?’ とか言って先生や私達に声をかけてくるんですが、思わずこちらも微笑んで返事
をしてしまいます。
ABAにもいくつかの流派というか流れがあるようで、その中でもロヴァース博士は最も知名度も高い主流派のよ
うです。したがってABAを語る上で、ロヴァース博士の提唱する理論や方法は必ずABAのベースになっています
が、その応用編や他の手法とミックスした方法もいろいろとあるようです。この学校で実践しているのも、そうした
プログラムのひとつで、ミー・ブックをよまれて、それをABAのベースにしている方、すでにABAをご家庭で実
践中の方からすると’少々、違うな’と思われるかもしれませんので、初めにお伝えしておきます。違いはあります
が、現在アメリカで教育の現場でおこなわれているABAのひとつということで、紹介する価値はあると考えたから
です。
それは Activity Schedule (アクティビティ・スケジュール/行動・活動計画)とよばれる手法です。
これはABAの理論というより、より具体的で実践的なABAベースのプログラムのことです。
キーワードは Errorless Method (エラーレス/間違いを犯させない手法)とIncidental Teaching(インシデンタ
ル・ティーチング/日常的な機会を利用してのABA)です。
私が自分用にとったノートからの抜粋で、参考になりそうなところをMLで紹介いたします。
(自分用にまとめたので、ですます言葉ではありませんがご了承ください)
★まずは、アクティビティ・スケジュール《Activity Schedules (行動・活動計画表)》について。
アクティヴィティ・スケジュ-ル(Activity Schedules) とは、プロンプトに頼ることなく子供たちが行動に移れ
る環境を整える手助けをするものである。
このActivity Schedules(行動計画表)をつかってのABAがこの学校に特徴的な方法である。基本的な考えは、一般に
作成する一日の行動計画表とかわらない。
この方法の最大の利点であり、目標とするところは、プロンプトに頼らず、子供が自ら次の行動をおこせるところに
ある。 ABA、特に 不連続試行訓練(discretetrial training)とよばれる過程で、獲得した行動は、獲得に要する
時間が短く、効率的である反面、行動の継続性が弱く、般化が困難、そしてプロンプトに対する依存性が高まり、そ
こからのフェーディングが極めて困難という欠点がある。
子供はしばしば、周りからのプロンプト待ちの受動的な状態に陥り、プロンプトがあれば、望まれた行動はとれるが、
ないと待ちの姿勢のまま、何もしないことが起きやすい。この欠点を克服し、プロンプトなしで子供が行動に移れる
ようなプログラムがActivity Schedules である。(誤解のないように、コメントしておくが、不連続試行訓練によ
る行動の獲得がABAの大事な手法であることに変わりはないし、Activity Schedules においても組み込まれている)。
★同時にもうひとつの インシデンタル・ティ-チング《Incidental Teaching=日常的な子供の行動に付随して強
化する方法》とあわせ、双方を子供の状態や課題によって使いわけている。
Incidental Teaching =日常的な子供の行動に付随して強化する方法で、不連続試行訓練が教師のプロンプトによ
って引き起こす行動を強化する方法に対し、こちらは、こどもが自主的にとった行動を強化していく方法。
時間と手間がかかり、不連続試行訓練ほど効率が良くない反面、獲得した行動の継続性が高いという利点がある。
また般化もしやすい。
★Errorless Method (エラーレス・メソッド)
通常の子供たちは、少ないきっかけ(ヒント)から、だんだん多くのヒントを(プロンプトと置き換えていい)与え
られることで、学ぶ。
例えば、洋服のカラー(襟)はどこ?という質問に対し、教師が、
1.あなたの近くにある、
2.あなたの体に接している、
3.着ているものの一部、
などと、プロンプトしていけば良い。これは Least-to-Most Prompts Sequence(最小から最大のプロンプトの流れ)
という。
自閉症児には、この全く反対の方法、Most-To-Least(最大から最小)が有効である。上の例で言えば、まずカラー(襟)
は‘ここにある、これだ’と正解を教えるところから始める。
この利点は、子供が失敗をしないことである(Errorless)。 自閉症児は予測できないこと、不測の事態、自分のや
ったことのないこと、できないことに極端に抵抗するので、正解から始めて、徐々にフェードしていく。
例えば、体の部位を触らせるABAの際も、教師が ‘鼻’と言ったとき(Touch your nose)、子供が耳に手をもってい
こうとしたら、即座に手をとって鼻にもっていかせる。間違いをさせない。‘鼻’といってから、子供の反応をじっ
と待ったり、耳を触った反応に対して、‘ちがう、だめ’(No.)等と言ったりしない。
間違えさせないので、’ちがう’という必要もない。
*********************************************
強化子について講義を受けているときに、印象に残った言葉は、
‘あなた自身が子供とっての最も強い(魅力的な)強化子になれるのが一番。そうすれば、どれだけあとのABAがや
り易く、楽しくなることか‘ ということ。
★インシデンタル・ティ-チング(Incidental Teaching)とは。
インシデンタル・ティーチングとは、自然で日常的な社会的相互関係(social interaction)の中で、ものの名前を呼
んだり、言葉で表したりする言語技能を学ぶ方法のことである。(Hart & Risley, 1975 JABA, 8, U. of Kansas)
・何故この方法を採用するのか。
-自発的な言語を引き出す
-プロンプト依存からの脱却に役立つ上、不連続試訓練に比しての般化への優位性
・何故効果的か。
-子供自身が選んだ状況・設定を利用するので、子供にとって自然な環境内での訓練の頻度が高くなる。
-真の強化子が形成されるので、理想的な学習機会となる
・インシデンタル・ティ-チングを始める為の前提条件
-物事に関心をしめすことができる
-行動・反応を真似できる
-簡単な指示に従える
-破壊的な行動の程度が低い
・インシデンタル・ティ-チングの構成要素
1.開始反応 (Initiation)
2.詳細な言語・記述への要求 (Request for elaboration)
3.反応 もしくはプロンプトを伴った反応
4.強化子の確認
・子供からの開始反応をどうして捉えるか
子供が: 何かに手を伸ばした時 ドアを開けようとした時
何かを指差した時 何かに近づいていく時
あなたを何かに向けて引っ張っていく時 単語や文章を言った時
何かの入れ物(容器)を開けようとした時 質問をしてきた時
何かをいじりはじめた時
・開始反応をどうやってひきだすか
-興味をもたせたいものを身近においておく
-素材を興味のもちそうな物に工夫してみる
-ある行動をする為に必要なものを(わざと)隠してみる
-好きなことをさせて、それから一旦やめてみる
(例えば、ブランコを押してやってから、押すのをやめてみる)
-ある物をじっと見つめてから、子供を期待を向けた目でみる
-ある物を子供に近づけてみる
-子供の目の前で、他の子供たちと関わってみる
-繰り返し遊ぶができる状況をつくりだす
(ブロック、パズル、双方向的・対話的なゲーム(interactive games))
・インシデンタル・ティ-チングで何を教える事ができるか
*学習可能な言語概念の例は以下の通り。
-色 -数(数え方)
-形 -大きさ
-機能 -Yes/No (はい、いいえ)日常的には、(うん、いや)
-同意語 -前置詞
-代名詞 -カテゴリー(ジャンル)
*学習可能な自発的な言語の例は以下の通り。
-(正解に近い、あるいは近づいていく段階の)言葉
-物の名前を呼ぶ
-質問をする
-手助けを求める
-完全な一文
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
ではアクティヴィティ・スケジュ-ルというのは、実際どうやっているのか?と疑問をもたれた方も多いと思いま
すので、具体例にいきます。
▼アクティヴィティ・スケジュ-ルを実際の現場でみて、特徴的な点をあげる。
1.教師は基本的に常に生徒の後ろに位置する。
課題によっては対面式や横並びになることもあるが、基本は後ろから(まるで二人羽織のように付き添って)、
手をとって、課題をすすめる。
例)
①‘マイケル、さあ始めよう’と声をかける
② 椅子に座る
③ スケジュール表を開く(机にスケジュール表は置いておく)
④ スケジュール表に貼ってある課題(例えばパズル)の絵・写真を指差す(課題は1ページに一つだけ)
⑤ 棚に課題をとりに行く(行動表のページに貼ってある番号、アルファベットや写真と全く同じものを、課題
で使うものがはいっているケースにはってある。これにより同じ絵・写真を頼りに子供が自分でケースを見
つける
⑥ パズルの入ったケースをもって席に戻る
⑦ ケースからパズルを出す
⑧ 組み立てる
⑨ ばらす
⑩ ケースへ戻す
⑪ 棚へケースを運んでもどす
⑫ 席へ戻る
⑬ スケジュール表に課題が終わった印のマーク(マジックテープで貼り付けやすくしてある)をはる
⑭ 次のページを開く
⑮ 次の課題を指差す
と続いていくとすると、この間、この方法をはじめたばかりの子供は当然、ほとんど何もできないし、理解できてい
ないので、全て、先生が手取り足取り、子供の後ろ側から手をそえて課題をこなしていく。
2.言葉による指示、説明は加えない
この間、言葉による指示や説明は一切しない。(座って、立って、パズルを探して、取りにいって、席に戻って、
パズルを始めて等、一切言わないし、指差しで指示もださない) 課題の始まり、終わり、うまく出来た時のほめ言
葉(強化)などの節目以外は、一切無言で進める。
つい ‘このパズルはここにはめようね’ ‘この丸いのはここだね’とか言いたくなると思ってしまうが、そう
したことも一切言わない。
言葉がただでさえ遅れていたり、これから言葉を覚えようという子供に言葉かけのない方法で問題ないのか、ときい
たところ、言葉を学習する課題をスケジュールの中にくみこんでいけばいいし、アクティヴィティ・スケジュ-ルを
こなしていく段階で学んでいくので心配ないといわれた。
(確かにプロンプトなしで、間違いなしですすめようと思ったら、こうするしかないなと思った次第)
逆に言えば、少しだけ使用する言葉は重要といえる。
アクティヴィティ・スケジュ-ルを始める時は、必ず
‘さあ始めよう’(Start your day)
‘何から始めようか‘ (Find something to do)
‘始め’ (Let’s work)
‘予定表を開いて’ (Do your schedule) 等と声かけする
(Cues to begin working)
3.最初のスケジュールは必ずほうびで終わること。
好きなお菓子であったり、お気に入りのおもちゃであったり、とにかくほうびで終わる。これもスケジュール表の
最後のページにそのお菓子の写真がはってあるという方法で、スケジュールを終了した=お菓子と区切りがわかるよ
うになっている。
%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%
私としては、まず学んできたことを出来るだけ客観的にレポートしてから、最後に少し私見と言いますか思ったと
ころをメールさせてもらおうかなと思っています。
紹介した例は学校に入学したばかりの3歳児で、発語もまだなくABAも全くの未経験なお子さんでしたから(つ
まりアクティヴィティ・スケジュールを始めたばかり)、本当に手取り足取りという感じにとれたと思います。
従いまして、ABAを既に実践されている方、ABAで順調にお子さんに成果が表れている方が、その段階から始め
る必要は全くないわけです。つみきの会にはロヴァース博士のミー・ブックをベースとしたABAという前提がある
わけですから、そこに書かれていることの重要性は言うまでもありません。逆に言うと、違いのあるところで興味深
そうなところをあえて、ひろって紹介しています。
誤解があるといけないので、念のため説明させてください。
アクティヴィティ・スケジュールというプログラムの中で、ロヴァース博士のABAにおいて重要な位置をしめる
不連続試行訓練(discrete trial training)という方法と今回、紹介しているインシデンタル・ティーチング
(Incidental Teaching)という方法は、どちらも重要で必要だということです。
とりわけ、初期段階においては、むしろ、前者の比重がはるかに大きいといえます。
インシデンタル・ティーチングを始める前提条件をご覧いただけるとわかると思いますが、そうした前提条件を整え
たり、基本中の基本のことを子供に教えるには、ミー・ブックに書かれていることが本当に役立つと思います。
今回のワークショップの先生達も、ロヴァース博士のことをきいた時には、’He is great’ と言いますし、
’ABA=ロヴァース博士の提唱している方法’ と理解している人たちがアメリカでも多いようです。
但し、これはABAのことを知っている人たちの場合で、私が思っていたほど、アメリカにおいてABAが一般的
に知名度があるわけではないようです。カリフォルニアやニュー・ヨークをはじめとした進歩的な地域では広まって
いるようですが、他の地域ではそうでもないようです。 <H.K>
【CD-ROM販売と本の貸出案内】
ある会員さんが、ご自身のお子様のために、名詞(約250)・動詞(約70)を撮影したものを入れてあ
るCD-ROMを、800円で販売してくださいます。神戸定例会に来られる方は、そちらでお受け取り
していただけますが、郵送希望の方は、800円+送料160円です。
いずれの場合も、まず坂田にご連絡ください。郵送希望の方は、改めて先方のご住所をお伝えします。
また、キャサリン・モーリス「わが子よ声を聞かせて」の貸出担当も、同じ方です。
貸出希望の方は、坂田までお申し込みください。
【お知らせコーナー】
<神戸12月定例会のお知らせ>
神戸12月定例会を下記の要領で開きます。
日時:12月15日(日) 13:30~17:00
場所:JR神戸駅前クリスタルタワー4階創作工房AB
参加費:1人ないし1家族500円
※今後の神戸定例会予定
・ 1月:1月19日(13:30~17:00) クリスタルタワー4階創作工房AB
<第1回東北交流会>
東北在住の会員さんを主な対象とする交流会です。
日時:12月23日(天皇誕生日) 13:30~16:30
場所:仙台市青年文化センター研修室(仙台市営地下鉄旭ヶ丘駅下車徒歩1分)
(地下鉄仙台駅から乗車10分)
内容:中級プログラム・集団プログラム・初期プログラム
参加費:1人または1家族につき500円
参加申込みは12月20日までに下記連絡先までハガキまたはメールでお願いします。
お申込みの際、お名前、参加人数(大人○人、子供○人)をご明記下さい。
〒960-1296 福島市金谷川1番 福島大学教育学部 飯嶋良太研究室
E-mail: ryota@educ.fukushima-u.ac.jp ※会員さんはなるべくお子様連れで願います。
<東京12月定例会のお知らせ>
東京12月定例会は、参加希望人数を確認した上で、開催を決定します。
予定日程は12月21日(日)です。
参加希望の方は、東京支部 木村さん(℡:03-3227-1884)まで、20日(金)までにご連絡
お願いします。
以上つみき通信12月号でした。来年もよろしくお願いします♪ <編集担当 坂田順子>