療育のコツ・子育てのこつ
第10号 2007.05.10:
「課題をとことん簡単にする」
<療育のコツ・子育てのこつ>
今日のテーマ「課題をとことん簡単にする」
先月は療育・子育てのコツとして、「ほめる(強化する)」ということを取り上げましたね。
セラピーを成功させるもう一つのこつは、課題をできるだけ簡単なものからスタートさせる、ということです。しかもふんだんに援助(プロンプト)して、とにかく成功からスタートさせます。これは就学期の教育や、家庭での機会利用型指導でも変わりません。
いきなり難しいハードルを課して、スタートからつまずかせてしまうと、子どもはそれだけでセラピーが嫌になってしまいます。ですから「せっかち」は禁物なのです。
ではどのくらい簡単にするか、というと、例えば、小さい子どもに、ボールを狙ったところに投げる、ということを教えるとしましょう。
私だったら、まずビニールプールを部屋の中に広げて、子どもをそのすぐそばに立たせて、子どもの手に持ちやすい大きさのボールを握らせて、「投げて」と言うと思います。そして手を取ってプールの方向にボールを放らせます。
それだけ的が広ければ、ただボールから手を離しただけでも、的、つまりプールの中に入ってしまうでしょう。そうすれば、子どもを成功させることができます。成功させることができれば、強化することができます。強化することができれば、子どもを学習させることができるのです。
おまけに、プールの中に色とりどりのボールが貯まっていけば、子どもにとっても楽しいですよね。たくさん貯まれば、ボールプールみたいに遊ぶこともできて、一石二鳥です。
そうやって、さんざん成功体験を積ませてから、徐々に課題を難しくしていきます。この場合は、子どもの立つ位置を、少しずつボールプールから遠ざけていけばいいのです。
ただし一気に遠くしすぎると、急に成功率も下がってしまい、子どもが嫌になります。ですから、5~8割は成功する程度にしておいて、成功したらきちんと強化し、失敗したら、強化を与えないようにします。そうすれば、子どものやる気はそこそこ維持されていき、学習が進んでいくでしょう。
前の段階より一段と遠くしたときは、子どもの手を取ってやり、投げるときのスイングを大きくするよう、プロンプトしましょう。プロンプトは徐々にフェーディングしていきます。
今のは、もし私が教えたら、ということです。実際には、私の娘には妻が別の方法で、ボールの投げ方(上投げ)を教えました。
どうしたか、というと、わが家にはトイザらスで買った、マジックテープが巻いてある小さなボールと、それを投げたらくっつくようにできている、同じく表面がマジックテープのようになっている丸い的がありました。
妻は居間のタンスにその的をぶら下げて、まず娘の綾をそのすぐ前(手を伸ばせば届く距離)に立たせ、ボールを持たせて、それを的にくっつけさせました。これなら失敗するはずがありませんね。
そうやって、何度も成功させてから、徐々に綾の立つ位置を遠ざけていったのです。この方法で、綾はいつの間にか、少し離れたところからでも、的を目がけて投げることができるようになりました。
投げることばかりを取り上げましたが、このほかにもいろんな課題で、「とことん簡単なものから徐々に難しいものへ」という「法則」は当てはまると思います。
どうか、難しい課題でお子さんを試さないで。難しい課題をやさしくかみ砕いて、お子さんがどうやっても成功せざるを得ないように持って行くのが、私たち親や教師の務めだと思って下さい。
藤坂