プログラム紹介
第11号 2007.05.17:「時計の読み方」
<プログラム紹介>
今週のテーマ「時計の読み方」
ちょうど時計教材のことをMLで話題にしましたので、今日は私流の「時計の読み方」の教え方をご紹介します。
教材の作り方
いきなり実物の時計だと教えづらいので、面倒でも手作りで時計教材を作りましょう。
私が自分の娘に教えたときに作ったものをご紹介します。
1.用意するもの
美濃版の厚手画用紙、黒、赤、青のマジック、鉛筆、ものさし、分度器、コンパス、画鋲、画鋲を反対側で受ける木の円盤
2.まず半径8.5cmの円をコンパスで描き、画用紙から切り抜きます。これが時計盤になります。
3.次に分度器を使って、中心から放射状に、30度間隔で鉛筆の線を引きます。その先端に黒マジックで、文字盤の刻みを入れ、1~12の数字を書きます。これで時計盤の完成です。
4.次に長針と短針を作ります。長針は長さ8.5cm、幅1.4cmの長方形を画用紙から切り取り、片方をとがらせます。短針は長さ7.0cmで、あとは長針と同じです。長針は青、短針は赤にマジックで塗ります。
5.長針、短針とも、とがっていない方の端から1cmのところを画鋲で刺して、さらに時計盤の中心をその画鋲の針で刺します。画鋲はせっかくですから、色の付いた可愛い物を使うといいでしょう。
6.画鋲の針を、時計盤の反対側から木の円盤で受けると、完成です。木の円盤は自分で作ってもいいのですが、私はデパートの外国製の木の玩具コーナーで売っている、数の教材用の木の円盤を流用しました。コルクでは脆すぎて、すぐにダメになります。この円盤をつまんで、針を動かします。
使い方
1.短針の読み方を教える
(1)まずは短針だけを使って、3時、4時、5時といった時刻だけを教えます。
①画鋲をはずして、長針は取り除き、短針だけの時計にします。
②針を1時、2時、3時…の線にぴったり合わせて、「何時?」と聞き、「1時」「2時」「3時」と答えさせます。順番に聞くばかりでなく、5時、2時、9時、4時・・・のように適当な時刻にランダムに針を合わせても、答えられるようにしましょう。
(2)長針を戻した状態で、長針に惑わされず、短針だけに着目して、時刻を答えられるようにします。
①また画鋲を外して、長針をはめ込みます。長針は12時のところに左手で固定しておき、右手で短針だけを動かして、「何時?」と聞いていきます。さっきと同じように、1時、2時、3時…の線にぴったり合わせて下さい。長針の方を見て、「12時」と答えてしまうようであれば、「何時?赤」と言って、赤い短針に注目させます。あるいは指で短針の方を指さして、プロンプトします。短針が12のところに来るときだけは、長針を少し横にずらして、短針が見えるようにします。あるいはいったん画鋲を外して、短針が長針の上に来るようにはめ直します。
②この時計教材で、長針を無視して短針だけに着目して、「○時」と答えられるようになったら、本物の時計でも同じ訓練をします。このときも、短針を○時きっかりのところに合わせて(従って長針は12時のところにあります)、答えさせて下さい。
(3)次に短針が、数字と数字の間にあるときでも「何時?」の質問に答えられるようにします。つまり例えば2時半でも、「何時?」と聞かれたら「2時」と答えられるようにするのです。
①(1)で消しゴムで消した、各時刻の線の中間に書いてあった数字を、もう一度鉛筆で薄く書きます。長針は適当な位置(例えば10時と11時の間)に左手で固定しておいて、右手で短針だけを動かしていきます。
②まず1時ちょうどに短針を合わせて、「何時?」と聞いて「1時」と答えさせます。次に1時と2 時の間に針を合わせて、そこに鉛筆で書いてある数字の1を手がかりに、「1時」と答えさせます。これを他の時刻でも繰り返します。
この段階では、短針が次の時刻、例えば2時の線に限りなく近づいたときまで「1時」であり、2時の線に達してから、やっと2時になるのだ、ということまで教える必要はありません。例えば1時ちょうど、1時ちょっと過ぎ、1時半くらい、1時40分くらいのラインまで、「1時」と言えれば十分です。次は2時ちょうど、2時ちょっと過ぎ、2時半、2時40分ほど、まで「2時」と言わせます。以下も同様です。1時50分くらいのときは、なるべく時間を聞かないようにします。子どもが自発的に言う場合、「1時」と言っても「2時」と言っても正解にしてあげましょう。
③この時計教材で、②が上手になったら、本物の時計に応用させます。本物の時計の針を動かしていき、例えば3時、3時15分くらい、3時半、3時40分くらいまで、「何時?」と聞かれて「3時」と答えられるようにします。4時、5時、6時などについても同じです。
この段階で、急いで「分」まで教えようとせず、数ヶ月、間を空けて、まずはこの「○時」「○時半」の概念をできるだけ日常生活に定着させましょう。 例えば「3時になったらおやつ」とか「7時になったら晩ご飯」といった生活のルーティーンを時刻と結びつけます。時計を見て、おやつやごはんの時刻になるのを待ち遠しそうにするようになったら、しめたものです。
2.長針の読み方を教える
(1)「○時半」を教える。 まずいきなり「○時○分」という正確な読み方を教えようとするのではなく、「1時」「1時半」「2時」「2時半」といった30分刻みのおおざっぱな時間の区切りを教えましょう。
①プロンプトとして、「6」の下のところに小さく鉛筆で「はん」と書いておきます(ひらがなが読める場合)。例えば長針と短針を8時ちょうどのところに合わせておいて「何時?」と聞き、「8時」と言わせます。次に短針を8時と9時の間に、長針を「6」のところに合わせて、「何時?」と聞き、すかさず指さしと言葉でプロンプトして、「8時半」と言わせます。
②「9時」「9時半」「10時」「10時半」などについても、同じことをします。十分に慣れたら、時計を逆行させて、例えば10時から逆に遡っていって、「9時半」「9時」「8時半」という練習もします。最終的にはランダムに、例えば「6時」「3時半」「「7時半」「9時半」「11時」「6時半」…のように。
③本物の時計に般化させます。
(2)「○分」を教える 小学校に入ったら、「○時○分」という正確な時計の読み方を教えましょう。お子さんの学習の進み具合によっては幼稚園のうちから教えてもいいですが、健常児でも幼稚園のうちは時計を正確には読めないのが普通なので、急がない方がいいと思います。
①長針と短針のある状態で、「何時?」と聞いて短針を読めることを確かめてから、画鋲を外して、短針を取り除きます。また時刻を表わす数字の外側に、鉛筆で、分の数字を薄く書き込みます。例えば「1」の外側には5,「2」の外側には10を書きます。そしてそれを手がかりに、長針を5分刻みに動かしていき、「何分?」と聞いて「5分」「10分」「15分」と言わせていくのです。ただし「12」のところには何も書かないようにし、「0分」とは教えません。 慣れたら、徐々に鉛筆の数字を消しゴムで消していき、鉛筆の数字がなくても、「5分」とか「25分」などと答えられるようにします。まだ「12分」「16分」といった1分ごとの刻みは教えません。
②今度は短針も取り付けて、いよいよ「○時○分」という読み方を教えます。例えば7時のところに長針と短針を合わせて、「何時?」と聞いて「7時」と言わせてから、長針を1のところに動かします。そして「何時何分?」と聞きます。ただちに短針を指さしながら、「7時」と言ってやってまねさせ、続いて長針を指さして「5分」と言ってまねさせます。「7時10分」「7時15分」と5分刻みで練習していきます。上手になったら、いろんな時刻に応用します。
③このとき、例えば「7時55分」のように、短針が8時に限りなく近づいているときは、「8時55分」と呼んでしまいがちなものです。この問題を克服するためには、時間を流れとして理解させなければ行けません。本物の時計(やや大きく、針が長くて読みやすいもの)を使って、7時から、10分刻みに針を動かしていき、「7時10分、7時20分、7時30分、7時40分、7時50分、8時」という風に読ませていきましょう。9時台、10時台、など他の時間についても同じ練習をします。 上手になってきたら、7時20分からいきなり7時50分に飛んだり、8時になってからまた10分戻したりして、それでも「7時50分」と言えるようにします。 10 分刻みで上手になったら、今度は5分刻みで同じ練習をします。
(3)「あと何分?」 ここで1分刻みの時計の読み方に進むより、先に「あと○分で○時」という読み方を教えましょう。その方が重要で、生活にも密着しています。 例えば時計の針を6時50分まで動かし、「あと何分で7時?」と聞きます。1つの数字が5分刻みであることを利用して、文字盤の11,12の数字を指さしながら、「5,10。10分」と言ってやり、まねさせます。55分からだと、あと5分、45分からなら、あと15分で次の時刻になる、ということを教えます。
(4)1分ごとの読み方 最後に1分ごとの正確な読み方を教えましょう。これは文字盤に1分ごとの刻みを鉛筆で書き込み、一つずつ数字を書き込んで行きます。最初はそれを手がかりにして、「7時1分」「7時2分」「7時3分」といった読み方を教えます。これは小学校2年生までに出来るようになれば十分です。3年生になったら、学校で、7時5分から7時12分までは何分間か、といった、時計を使った正確な時間の理解を教えます。
藤坂