ミニマガつみき

ABAミニ知識

第17号 2007.07.05:「結果操作と先行条件操作」

<ABAミニ講座>
今日のテーマ「結果操作と先行条件操作」

皆さんはABAの基本原理(もっと正確に言うと、行動変容の基本原理)は、「強化」「消去」「罰」の3つだ、ということは、つみきBOOKなどを通じてご存じですよね。
人の行動が増えたり減ったりするのは、基本的にその行動の前ではなく、後に起こる出来事によって決まります。行動の後にいいことが起こると、その行動は増えます。これを「強化」と言います。行動の後にちっともいいことが起こらないと、その行動は減ります。これが「消去」です。悪いことが起こると、やはりその行動は減ります。これを「罰」と言います。

(行動分析の専門家の皆さん。これが正確な定義でないことは知っています。正確に言うと、強化とは、行動の直後に何らかの刺激が与えられたり、取り去られることによって、以後、その行動の生起頻度が上昇することを言うんですよね。行動が増えれば、何であろうと強化なのであって、「いいこと」なんていう価値判断を定義に入れてはいけないのです。でも、ここでは厳密さより、わかりやすさを優先させて下さい)

ですから、子どもの行動を変えようというときも、その行動の前に何かをするのではなく、行動が起こった後で(!)強化したり、消去したり、罰したりすることが基本です。ABAは基本的に「後出し」なんです。これを「結果操作」とか「結果の工夫」と言います。
言い換えれば、「ABAの基本は結果操作」です。

しかしABAも行動の前に介入をすることがあります。というか、特に問題行動に関しては、だんだんこの「事前の工夫」が強調されるようになってきました。こちらを「先行条件操作」と言います。

先行条件操作の典型的なものは、問題行動を起こりにくくする物理的な工夫です。例えば髪の毛を抜く自己刺激がある子どもの場合は、いつも帽子をかぶせるようにすると、それだけで髪の毛を抜く行動が減ったりします。おちんちんをいじる自己刺激が頻繁な子どもの場合は、パンツに手を入れにくいように、つなぎ着を着せたりします。

そういえば、先日のセラピスト勉強会で、成人施設にお住まいの方が、昼休憩に自慰行為を頻繁に行う成人男性に対して、昼休みに一人にさせないようにし、代わりに本人にとって快適な上半身のタオル拭きと、さわやかなオイル?を塗ってあげるようにすると、自慰行為が大幅に減った、と報告されていました。 これは物理的な工夫(一人にさせない)と、代替行動の強化(タオル拭きとオイル塗り)を組み合わせてうまくいった事例ですよね。

その他、難しすぎる課題に対して、かんしゃくや反抗などの問題行動がでる子どもに対して、(かんしゃくの直後ではなく事前に)課題を簡単にしてあげる、というのも、先行条件操作です。

しかし先行条件操作には、落とし穴もあります。

例えば何か新しいことを教えようとすると、ストレスを感じてパニックになったり、頭をがんがん机にぶつける子どもに対して、新しいことを教えるのをやめて、次の日から彼の得意な課題だけを教えるようにしたとします。これも先行条件操作ですよね。

しかしそれでは、彼はいつまで経っても、新しい課題に取り組めるようにはなりません。

新しい課題に取り組ませるためには、出来るだけスモールステップにしたり、プロンプトを多用する、という工夫も必要だけれど、結局は子どもがいやがって抵抗したときに、それに取り合わずにやり通す、と言うことも必要なのです。つまり最後の決め手は、やはり結果操作、というわけです。

藤坂