ミニマガつみき

ABAミニ知識

第40号 2008.01.03:「行動連鎖」

<ABAミニ講座>
今日のテーマ「行動連鎖」

私たちの日常の行動の多くは無数の行動連鎖から成っています。行動連鎖は小さな行動の単位から成っていて、一つの行動の結果が次の行動の引き金となる、という形で次々と鎖のようにつながっている、という特徴があります。

例えば皆さんの目の前に缶に入ったよく冷えたコーラ(あるいはビールでも何でもお好きなもの)があるとします。あなたはのどが渇いていて、今すぐコーラが飲みたいと思っています。

するとあなたはまず①コーラを手にとって、②プルタブを引き、③缶を持ち上げて、④ちょっと傾け、⑤飲み口に口を付けて、⑥そのまま缶を傾けつつ持ち上げると共に頭を後ろに引きます。そうすると冷たいコーラが口に入ってくるので、⑦あなたはそれをごくんと飲むでしょう。

この時、目の前にコーラがあることが行動の引き金(ABAの用語で弁別刺激(SD)と言います)になり、①コーラを手に取る、という行動が生じます。手に取った感覚は次の②プルタブを引く、という行動の弁別刺激になります。プルタブを引いて開いた状態は、次の③缶を持ち上げる、という行動の弁別刺激になる、という形で、どんどん最後の行動までつながっているのです。

さらにいうなら、①から⑤までの行動では、まだ口の中にコーラが入ってきていないので、それらの行動はまだ強化を受けていないように見えます。これらの一連の行動を強化するのは、本来、⑥によって口の中に冷たさと甘さが広がることや、⑦によってのどの渇きが癒され、のど越しの心地よい刺激が得られることでしょう。

しかしこの行動連鎖の最後で得られる本来の強化子といつも一緒に経験されることで、やがて①から⑤までの行動の結果も、強化子としての効き目を持つようになるのです。

例えば、⑤の飲み口に口を付ける行動は、それだけでは強化子をもたらさないはずですが、その行動の結果、つまり口を付けた状態は次の、缶を傾けてコーラを口に流し込む、という行動を引き起こすため、いつも口の中のコーラの味わい、という本来の強化子とセットでその直前に経験されることになります。そうすると不思議なもので、いつしか缶に口を付ける感覚自体が、強化子としての力を持つようになるのです。これを「条件性強化子」と言います。

このように行動連瀬の途中の一つ一つの行動の結果は、次の行動の弁別刺激(SD)であると共に、その行動を強化する条件性強化子としての役割も果たしています。これが行動連鎖の特徴です。

行動連鎖を作る技法をチェイニング、と言いますが、それは次回にでもお話ししましょう。

藤坂