ロサンジェルス在住の飯島さん執筆
第52号 2008.04.17:
「LRE – 最も制約の少ない学習環境とは」
ロスの飯島みゆきさんからのレポート、三回目です。
大変詳しいレポートで、非常に貴重な情報だと思います。
アメリカでは親による付き添いは認められないとのこと、意外と融通が利かないのですね。(編集長)
第3回 LRE – 最も制約の少ない学習環境とは
現在私の娘は地域の公立小学校内にある障害児クラスに在籍する小学校5年生(5th grade)です。
自閉症児のプレイスメント(在籍クラス)の選択は概ね日本と同じで、 地域の学校の普通学級、地域の学校内にある障害児クラス、公立の養護学校 (いくつかのシティが集まって運営、もしくはカウンティで運営している形態が多い)、 自閉症児を受け入れる私立の普通校、私立の養護学校などがあります。
アメリカの障害児教育法に定められた大枠に、第2回で触れた FAPE(Free Appropreate Public Education – 無償で適切な公教育の権利) と同列とされるもっとも重要な障害を持つ子供の権利として LRE(Least Restrictive Environment – 最も制約の少ない学習環境を与えられる 権利)が定められています。
制約がない環境とは、障害を持たない子供と同様の教育機会を与えられる権利、 つまりその子供に望ましいとされる健常児と同様の学習環境=普通学級で学ぶ 権利があるということで子供にあった統合教育を受ける権利が保証されているといわれています。
しかし障害の程度や子供の学習スタイルにより障害児クラスや養護学校が その子供にとってより学ぶ環境にあるということで親と学校側が同意すれば 普通学級以外のクラスに在籍し、その場合も学校にいる一日のうちの 一部の時間を統合教育を受けられるよう学校側は配慮する義務があります。
私の娘は合意のもと障害児クラスに在籍していますので 娘のIEPの書類には娘の障害により少人数で構造化された環境が 娘の学習スタイルに適しているため、LREに基づき障害クラスに在籍する、と記載されています。
また娘の場合は一日の学校時間のうち30%は普通クラスで授業を受けることと とIEPで定められていて(この割合は子供によって違いますがなるべく普通学級で 健常児と過ごすことが上記のLREによって義務付けられています) 理科、音楽、算数を普通学級(エイド付き)で受けています。
一般にいわゆる知的な遅れがない、もしくは知的な遅れが軽い自閉症児は エイド付き(もしくはエイドなし)で普通クラスに在籍している子供が多いようです。
ちなみに日本のような親の付き添いは認められていません。 この親の付き添いに関して法律によって規制されているかどうかはわかりませんが 必要ならばエイドをつけるサービスを学校側が提供しなければならない= 親が付き添いするということは前回に述べたFAPE(Free Appropreate Public Education 無償で適切な公教育を受ける権利)に抵触するためかと思われます。
ではこちらの学校が障害を持つ子供に対してインクルージョン(統合教育)に積極的かと言うとそういった印象はあまり受けません。
知的な遅れがありかつアカデミックスキル(学業成績)が遅れている子供、 もしくはビヘイビア(問題行動)が多くみられる自閉症児の場合学校区が プレイスメントで普通クラスをすすめることは非常に稀です。 そのため普通学級にエイド(ABAの訓練を受けた)付きで 在籍させたい親が裁判(調停・公聴会)に持ち込むケースも多くあります。
日本の場合子供の進学先の選択の最終決定権は親にあるとよく聞きますが (実際のところはよくわかりませんが) こちらではむしろ学校側の提示してきたプレイスメントを親が受け入れるケースがほとんです。もちろん同意しない場合上記のような裁判に行くことはできますが 要求が通るケースばかりではないため、決定権はむしろ学校側にある といってもいいと思います。裁判に行かない限りは学校側の提示した プレイスメントを受けるしかありません。
最近の傾向として教育費予算削減のため学校の統廃合、校長やスクールナース、 スピーチセラピストの学校をかけもち、 障害児クラスを減らしスキルの違う子供たちの混合障害児クラスを無理やりつくったり、 ほとんどの障害児クラスをなくし、普通学級に在籍させ、ある一定科目のみ子供に 取り出し授業をさせる形態にする学校区も少なくありません。
何のサポートもなく普通学級に障害児を送り込む方針と反発する親、 インクルージョンがすすむと一応歓迎する親(少数派かもしれません)、 反応はさまざまですがここカリフォルニアでは教育費予算カットのしわ寄せは間違いなく 子供たちに直撃しています。
(続く)