ミニマガつみき

関西在住の佐々木さん執筆

第55号 2008.05.09:
「シャドーレポート」

佐々木さんによるシャドーレポート第2回です。

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年少さんの三学期からのプレ通園がおわり、春に年中クラスへの正式な入園となりました。
入園式の後、教室でお父様お母様方に、自閉症という障害のこと、園生活で娘の不足しているスキルを個別に教えていくために、親が介添えにつく必要があることを説明し、御理解をいただきました。幸いにも皆さん好意的に話を聞いていただき、後で娘にどう接すればいいのかを聞いてくれる方までいらっしゃいました。

本格的に、娘の幼稚園での生活が始まりました。とはいっても、健常児と同じ時間を園で過ごすのではなく、行事の有無にもよりますが、週に3日程度から始めました。まずは園での基本的なルーチンをこなすことに集中しました。当時チェックしていた事項です。

登園前
・決められた時間内に朝食を食べる
・制服へのお着替え
・持っていく物を自分で探して持つ
・「いってきます」のあいさつ

登園時~
・教室に行くまでに先生や園児へのあいさつ
・自分の教室まで行く
・上履きに履き替える
・担任の先生へのあいさつ
・コップ、タオル、カバンを各所定の場所におく
・お帳面に出席のシールを貼る
・制服をたたんでスモッグに着替える
・手洗い

午前中の活動
・名前を呼ばれたら返事をする
・体操の時間
・お歌の時間
・お話を聞く態度
・制作その他の活動・etc

昼休み
・昼食のテーブルセッティング
・手洗い
・食器の準備
・食事中の態度
・食器の後片づけ
・歯磨き

午後の活動
・制作その他の活動・etc

上記の内容等を、一人でできた、プロンプト(指さしあり、声掛けあり、身体的補助あり)と段階を分けてチェックし、できない内容は家に持ち帰って練習しました。
登園しない日は通常のセラピーの内容と平行して進めました。担任の先生には、アイコンタクトの徹底と、出した指示の完遂をお願いしました。歌や制作に対しても事前に先生にお歌をカセットに吹き込んでもらい、課題を教えてもらって予習しました。その甲斐あって歌もお友達と一緒に歌い、制作も楽しんで取り組んでいました。

ある程度、想像していたのですが、いざ通園してみると、できないことだらけでへこみました。家ではできているのに園ではできないというものがたくさんありました。何で園ではできないの!と何回も切れそうになりました。

ある時、担任の先生が私の怒りのオーラを察して、娘の反応を上手に引き出していただいたことがありました。その時は恥ずかしさと、自分のふがいなさに、年下の先生に抱きついて泣いてしまいました。
そんなことがあってからは、切れそうになる前に先生に任せ、教室から出て外で深呼吸をするようにしました。

なかなか我が子に対して冷静に対処するというのは難しいのですが、通園途中から気を付けようと思ったことは
・何もかも一度にやろうと考えず、ひとつひとつ確実に解決していくこと。
・普段の課題は異なる状況下で、パターンを変え、言い方を変え、般化すること

シャドーに関してはつみきブックや過去ログに載っているので詳細は割愛しますが、我が家の3箇条は

1.観察:冷静に観察して、できない原因や、不適切な行動の要因を探ること(これが一番難しい。わかっていてもなかなかできませんでした。今でも・・・)

2.強化:獲得中の課題への強化や、適切なふるまいができている事への強化

3.補助:自発を促すように適切で最小のプロンプト

です。
メーリングでも他の園児との係わり合いの話題がありましたが、やはり同じようにシャドーとして入ると甘えて寄っている子がいます。

園児の話を聞いているうちに娘がいなくなる・・・初めのうちはたくさんありました。そんなときに、担任の先生が「○○ちゃんのママに言わずに、先生に聞いて」と声を掛けてくださったり、副園長先生からも「他の園児の事は気になさらずに、もっと佐々木さんの思うようにされて良いですよ」と言葉をちょうだいして吹っ切れました。 園児が「○○して遊ぼう」と言ってきても、娘ができそうもない遊びの時は「おばちゃんは遊びに来てるんとちゃうねん」と言い、できそうな遊びなら「○○(娘の名前)がするって言うならおばちゃんもするから誘ってきて」というようにしました。

教室の後方で娘を観察している時に、園児が横に座ろうとするなら、「もっと先生の顔が見えるところに行きなさい」とお尻を押しやり、わからない時やできない時に頼ってきても、「先生に聞きなさい」、「先生に言っておいで」と流しました(水筒を開けたり、ボタンをとめてあげる事くらいはしましたが)。 その代わり、娘に話しかけてくれたり、遊びに誘ってくれた子には、頭をなでたり、「○○(娘の名前)に話しかけてくれてありがとう。助かるわ」と言って、強化しました。

そうすると、上手に娘の気を引いてくれる子が増えました。こうやって、担任の先生より目立つこともなく、シャドーとして思うように動けるようになりました。

(つづく)