関西在住の佐々木さん執筆
第56号 2008.05.15:
「シャドーレポート」
佐々木さんのシャドーレポート、三回目です。
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幼稚園の通園中は、藤坂さんや、先輩会員さんに多くのご助言やアイディアを頂戴いたしました。年長編ではその中のほんの一部になりますが、幼稚園に関することがらを紹介したいと思います。
娘は年長になっても先生のお話しを聞いたり、お友達からの話しかけに反応するのが苦手でした。(今でも苦手ですが・・・)
初めのうちは、注意力の不足が原因と考えて課題を進めていたのですが、なかなか状態が良くならず、悩んでいた時にいただいたアドバイスがあります。
・健常児と娘との相違点を見つける。健常児の子が反応できて、娘が苦手な反応を拾い出し、状況等を記録しておく。
・特に娘が理解してなさそうな単語や言い回しを記録する。それを家庭でフォローアップする。
・園では、先生のいろいろなパターンの話しかけや、特に明確な指示ではないものに反応できるようにプロンプトする。
年長さんになると、先生の言葉が年中さんの時に比べて難しくなってきます。年中の時のような丁寧で直接的な言葉ではなく、指示の時にも間接的な表現等が増えてきます。健常児のお友達の言葉も高度になってきます。
娘の調子が上がらないのは、言語の理解とコミュニケーション能力の不足も一因となっていて、それがなお注意力を悪くしているいことがわかってきました。
まずは、先生やお友達が話す言葉で娘が反応しない、または、できない物を拾い出し、その原因を考えました。
例えば先生が班分けの時に「ひとりぼっちの子がいるよ」という言葉に反応できなければ、ひとりぼっちの意味やその子を誘いなさいと言う間接的な意味が理解できていないかもしれませんし、お友達が「俺ん家、10歩でかえれるで~」に反応できなければ、家が近いということや自慢していることを理解していないかもしれません。
これらのように、反応しない要因を調べるために、以下のように分類して整理しました。
・注意不足(あとで同じ事を言うと聞き取れる内容なのに反応しなかった)
・表現の理解(婉曲、倒置、主語の省略) ・語彙の理解(単純に単語の意味がわからない)
・イントネーションの違い ・概念の理解(時間や空間等) ・長文の内容の聞き取り能力 ・応答の仕方がわからない
・その他
いざ拾ってみると、あるわあるわで拾い出し表がすぐにいっぱいになり、たくさんの言葉に反応できていないことに愕然としました。 拾い出した言葉に対して優先順位を決め、少しずつですがパターンを変えながらで受容と表出に取り組みました。(今も消化できていないものがあります・・・)
その時にわかったことなのですが、ある程度言語能力がついてきているのに、普段の家庭での娘への話し言葉が、ついついセラピー口調で、娘に理解しやすいような単調なものになってしまい、一方通行な会話をしがちでした。
また、娘の不十分なボキャブラリーでの話しかけにも、娘が何を言いたいか、したいかを無意識に理解して反応してしまい、適切な言葉を引き出す機会を逃していました。 この事は、娘にとっては都合がいいことなのですが、逆に、娘の聞き取りやコミュニケーションなどの言語能力を広げることに対して妨げとなっていたようです。
園児の話題や流行もリサーチしました。知らないことに対しての興味が薄いこともあり、それゆえ園児の話題や遊びについて行けないことが多々ありました。
多くの園児が見ているTV番組を見せたり、キャラクターやギャグ等を教えたりして、園児の輪に入りやすいように心がけました。特にギャグは会話力にあまり頼らなくて良いので、娘も楽しんでお友達と遊ぶことができました。
基本的な会話にも力を入れました。他人からの話題に、あいづちやコメントで応え、続けて適切な話題や質問を返す等の会話をスクリプト形式で練習しました。
ママ:「お買い物に行く?」
娘 :「うん、行きたい。グミ買いたいな~」
ママ:「ママもお菓子買おうかな~」
娘 :「ママ、何のお菓子にするの?」
ママ:「チョコボールにしようかな」
娘 :「それ、私も好き」
これらは話題やコメントする場合や質問をする場合など、パターンを設定して試行しました。
話題は娘の興味のあるものを中心に設定しました。 年長は就学が近づいていたこともあり、焦ってばかりで課題が絞りきれなくて、思い描くような結果が出ず、よく夫婦でもめました。
今でも痛感するのが、基礎力の重要さです。基礎となる課題は中途半端にせず、継続的に手を変え、品を変え、場所を変え、言い方を変えてもできるかを確認して進め、同時に般化をしていかないと、園の活動はそれらの総合的なスキルを求められるので、なかなか結果が伴わないことが多々ありました。
多くの課題を設定して内容が手薄になるようなら、基本的な内容にしぼって集中して進めていく方が結果的に近道かもしれません。
(つづく)