療育のコツ・子育てのこつ
第6号 2007.04.12:
「ほめる」
<療育のコツ・子育てのこつ>
今日のテーマ「ほめる」
わが家はとうに早期介入の時期を過ぎていて、家内はいまも一対一で勉強を教えていますが、私は時々ピアノを教えるくらいで、フォーマルなレッスンは何もしていません。
ですから、いま私が自分の娘にやっているのは、いわゆる「生活の中での関わり」ということになります。
その「生活の中での関わり」において、やはり一番大切なのは、「ほめる」こと、言い換えると、「いい行動を強化する」、ということだと思います。これだけは、私が生きている間中、娘に対して続けるでしょう。
「ほめる」ということは、わかりきったことのように思われるかもしれませんが、これがなかなか難しいのです。例えば私の妻は、どうもほめることが苦手なようです。
夜、帰宅して、妻が娘に対して言う言葉を聞いていると、いつも小言ばかりです。「あや!」に始まって、「ぴょんぴょんしない」「大きい声で笑わない」「気をつけて!」「なにしてるの」・・・
最初は私も我慢していますが、小言が2回、3回と続くと、たまらず口を出します。
「それじゃだめだよ。叱ったら、それ以上にほめなきゃ。叱るだけじゃ、いい行動は増えないよ」
妻はそういわれると、その時だけ神妙になって頷くのですが、どうも心底では納得していないようで、物の1時間も経てば、元の木阿弥になってしまいます。
「あやー!」「なにしてるの」「○○っていったでしょ!」・・・
この10年来、この繰り返しです。
本当は叱る回数の何倍もほめてほしいのですが、それは妻には無理なようなので、最近は「一回叱ったら、次は必ず一回ほめる」とアドバイスしています。
これだって、妻には「馬の耳に念仏」だと思いますが、せめて皆さんは実行してみて下さい。
どうしたらいいか、というと、何かで一回叱ったら、次はどんなに悪いことをしていても、見て見ぬふりをして、何かいいことをさせる機会を窺います。
そして、思いついたら何か簡単な指示を出して実行させ、その時にほめるのです。
させることは、例えば「ジャンプして」とか「タオル取ってきて」とか、何でもかまいません。ただ、お子さんが言ったら確実にしてくれそうなものを選びます。もししなかったら、モデルを見せるなり、軽く手を添えてプロンプトするなりして、実行させましょう。
で、お子さんがその通りにしたら、「えらいね」と笑顔でほめてあげるのです。
問題行動が続いている場合、それをやめさせるために、その行動と矛盾する指示を出すのも一つの手です。
例えば、ぴょんぴょん跳んでいるとすると、「跳ばない!」と否定的な指示を出すのではなく、「ソファーに座って」などの肯定的な指示を出します。
人間不思議なもので、「跳ばない!」と否定的な指示を出したときは、子どもが言うことを聞いても、あまり心からほめる気になりませんが、「ソファーにすわって」などと肯定的な指示を出したときは、ほめる気になるものです。
それから「心からほめる」ためには、結構練習が必要です。
また私の妻を引き合いに出してしまいますが、妻のほめ言葉を聞いていると、低い声で絞り出すように「そう、えらいね」と言うだけなので、ちっともほめているように聞こえません。要するに芝居の出来ない人間なのです。しかも要求水準が高いので、娘が彼女のお眼鏡にかなった行動をしたときでないと、心からほめる気になれないようです。
ですから、心からほめるためには、まずお子さんについてあまり高望みをしないようにしましょう。
周りのよくできる子を基準にするのではなくて、そのお子さんの1年前の状態を基準にしてみます。
そうすると、「一年前はこんなことできなかったなあ」と感動してしまい、ほめる気にもなるというものです。
それから、うまくほめるためには、芝居も必要です。俳優になったつもりで、ハートフルな笑顔と、甘い声のほめことばを用意しましょう。結婚する前のご主人に言っていたような調子で。(言ってなかった?)
要するに「ぼくは(私は)うまくやってる。ぼくはお母さんに好かれてるんだ」と思わせるようなほめ方をするのです。
藤坂