ABAミニ知識
第1号 2007.03.01: 「随伴性」
ごあいさつ
会員の皆様、代表の藤坂です。
これから毎週1回のペースで、ささやかなメールマガジンを発行していきたいと思います。
第一週から第四週まで、週ごとにテーマが変わります。例えば毎月第一週は「ABAミニ知識」第二週は「療育のこつ・子育てのこつ」といった感じです。第五週があるときはお休みします。
このメールマガジンは、つみきメーリングリストを通じて、メール会員全員にお届けします。
どんな記事が載るか。いつまで続くか。お楽しみに。
ABAミニ知識
今日のテーマ「随伴性」
子どもに何かを教えるとき、一番大切なのは「強化」です。
その強化をするときに大切なことに「随伴性」と「即時性」があります。 「
即時性」はわかりますね。行動の直後にすばやく強化しないといけない、ということです。
例えば子どもにマッチングを教えるとき、子どもがおわんとおわんを重ねて、「パコッ」と言う音がしたら、まるで早撃ちガンマンのように、すばやくほめて、あっという間にお菓子を差し出します。行動と強化との間が近ければ近いほど、強化の効き目は強くなるのです。
では「随伴性」ってなんでしょう。
それはある行動のあとに、強化が「おまけ」のようにくっついてくる、ということです。
「おまけ」の特徴は二つあります。
一つはその商品に必ずくっついてくる、ということ。
もう一つは、その商品にしかくっついてこない、ということです。
この二つの特徴があるから、そのおまけが欲しい人は、熱心にその商品を買います。これが随伴性の効果です。
つまりある行動にある強化子が随伴する、とは、
1.その行動の直後には必ずその強化子が与えられる、
2.その行動が起っていないときにはその強化子は与えられない、
という二つのことを同時に意味しています。
即時性だけでなく、随伴性があって初めて、強化子は強化子としての効き目(つまりその直前の行動を増やす働き)を発揮するようになります。
私たちも、子どもに適切な行動を教えようと思ったら、この「随伴性」に気をつけなければいけません。
例えば、セラピー中や休憩時間に、お母さんの隙を見て、パッと強化子のお菓子に手を伸ばして、わしづかみにして口に入れる子がいます。
こういうことを何度も許してしまうと、「お母さんの指示に従わなくてもお菓子が食べられる」ということになり、学習への意欲が湧かなくなるのです。(おかしが、指示に従う行動に随伴していないわけです)
セラピー以外の自由時間に、ふんだんにおやつを食べさせてもらっているお子さんも同じです。
何もセラピー中に難しい課題に頭を絞って正解を探さなくても、自由時間にいくらでもおいしい物が食べられるのですから、おやつは正解を出す、という行動に随伴していません。これでは「正解を出す」という行動は一向に増えないでしょう。
ですから、ごほうびとしてのお菓子の効果を最大限に高めようと思うなら、自由時間には出来るだけおやつを与えず、セラピーの時だけ与えるようにします。 そしてセラピー中もいつも気を抜かずに、お子さんがお菓子をつまみ食いしないかどうか、しっかり見張っておきます。「子どもに背中を見せない」「子どもにバック(背後)を取られない」ことが大切です。
お菓子だけではありません。例えばお母さんの視線や声かけや身体接触は、お子さんにとって強力な強化子です。有効に使えば、大きな武器になります。
しかしセラピー中にお子さんが勝手に立とうとしたとき、席から崩れ落ちたとき、教材を投げたとき、不注意から不正解したとき、いやになって泣き声を上げたとき、いずれの時にも、お母さんがお子さんの顔を見て手を握り、しかったりなだめすかしたりしていたのでは、せっかくの強化子をムダ撃ち、乱れ撃ちしてしまい、有効に使えていないことになります。
逆に、これらの行動はすべて無視して、お子さんが席にすわってお母さんの方を見て、真剣に指示を聞き、正解を答えたときにだけ、視線と声かけと身体接触の集中砲火を浴びせれば、お子さんの適切な行動はきっと伸びるでしょう。お母さんの持つ自然な強化子を、これらの適切な行動に随伴させているからです。
こんな風に考えてみて下さい。
お母さんのくれる強化子は、真っ暗な道を歩いているお子さんにとって、進むべき方向を指し示してくれる明かりです。その明かりが、右に行ったときにも灯り、左を向いたときにも灯ったのでは、お子さんは道に迷ってしまいます。
ですから、いつもお子さんが正しい方向を向いているときにだけ、お子さんに強化子という明かりを与えるようにしましょう。
以上、ミニマガつみき第1号でした。来週をお楽しみに。