第48号 2008.03.20:「4才頃のプログラム」
<プログラム紹介>
今日のテーマ「4才頃のプログラム」
久しぶりに、娘の小さい頃のプログラムを紹介します。
今回は娘がちょうど4才になった頃にやっていたプログラムです。 ABA 開始から1年10ヶ月が経ち、娘は伸び悩みで、あまりプログラムに画期的な進歩はありません。その中で、少しでも参考になりそうな課題をいくつかかいつまんで紹介します。
複雑な指示:
「黄色いボールをかごの中に入れて」「赤いボールをバケツの中に入れて」「緑のボールを箱の中に入れて」 三色のボールを用意し、入れ物を3つ用意して、3×3で9通りの指示を作って、それを正確に聞き分ける練習をしています。記録を見ると、この頃、結構力を入れてやっていたようです。
~も:
この頃、「も」の使い方を教えています。
子どもの前に物を5つ、大人の前に物を5つ、一つ一つが向かい合うように並べておきます。そのうちいくつかは同じ名前の物にします。
大人が右端から物を一つずつ取り上げ、「これはバナナ」とか「これはぞうさん」などと名前を言っていきます。
子どもは大人の取り上げた物の向かいにある自分の側の物を持って、「これはリンゴ」などと言います。このとき、同じ物同士が向かい合っていたら、大人が「これは○○」と言ったのに対して「これも○○」と言わせるのです。
動詞:
動詞を伴う表現を少しずつ増やしています。例えば「火が燃えている」「這ってる」「棒にぶらさがってる」「ひもを結んでる」「ひもがほどけてる」「穴が開いてる」などの表現を教えています。
分類:
分類概念として、それ以前から「動物」、「果物」、「乗り物」、「やさい」、「楽器」を教えていたのですが、この頃、さらに「虫」「鳥」「入れ物」「数字」「文字」「色」「形」「人」などを加えています。
形容詞:
「近く/遠く」、「かたっぽ・両方」、「厚い・薄い」などの形容詞的概念を新たに加えています。
まだあるのですが、眠くなってきたので、この辺で。
藤坂
第42号 2008.01.17:「条件付き指示」
<プログラム紹介>
今日のテーマ「条件付き指示」
今日は「条件付き指示」を取り上げます。
これは音声指示の一種ですが、その中では難しい方です。
簡単なものなら3才でもできると思いますが、難しいものは中級課題が半分以上終了した、4才以上のお子さんでないと無理なのではないかと思います。
どういうものか、というと、「~だったら、~しなさい」という指示を出して、それに答えさせるのです。
簡単なものでは、「ママが、『いち、に、さん、はい』と言ったらジャンプしてね」とか、「音楽が止まったら、すわってね」といったものです。
もう少しむずかしいのになると、「お風呂のお水が一杯になったら、パパを呼びに来てね」と言った指示に答えさせます。
またこの手の指示に従えるようになると、「明日、晴れていたら公園に行こうね」といった条件文も理解しやすくなるでしょう。そうすれば、公園に行くつもりだったのに、雤で中止になって、なぜか分からず混乱する、ということもなくなるはずです。
教え方としては、一番簡単なものから始めます。例えば、さっきの例のように「『いち、に、さん』と言ったらジャンプしてね」という指示を出し、最初は「さん」のところで、手を取って促すなどしてジャンプさせます。だんだんプロンプトを減らしていき、「さん」という言葉だけでジャンプができるようにします。
これができるようになったら、『いち、に、さん』と言ったら、すわってね」という指示も出してみます。そうすると、子どもが指示文の後ろ半分、つまり「すわってね」という部分を聞き取っているかどうかがわかります。「『いち、に、さん』と言ったらすわってね」と言ったのに子どもがジャンプしてしまったのなら、指示の文章を本当には聞き取っていなかったのです。
この場合は、プロンプトしてすわらせ、次の試行からプロンプトをフェーディングしていきます。そしてプロンプトをゼロにしてから、もう一度「ジャンプしてね」の方に移り、最後に「ジャンプしてね」と「すわってね」のランダムローテーションを行ないます。
下の句をいろいろ変えても大丈夫になったら、今度は上の句を変えてみます。例えば「ママがタンバリンをたたいたら、ジャンプしてね」にしてみます。これだけなら何度かプロンプトすれば覚えるでしょう。
少し簡単すぎる、と思ったら、楽器をいくつか用意します。例えば笛、カスタネット、タンバリン、おもちゃのピアノ、トライアングル。そして「ママがタンバリンを叩いたら、ジャンプしてね」と指示を出します。
この場合、タンバリン以外の楽器を鳴らしたときにジャンプしてしまったら、不正解にするのです。これだと急に難しくなりますね。
この課題はもっと難しくすることも出来ますが、日常生活の必要と離れてことさらに難しくするのは、子どもを必要に苦しめるだけです。それより日常生活に役立ちそうなプログラムを考えましょう。
例えば路上で、「ママが『車』と言ったら、道の端に避けなさい」という指示を出します。最初は「車」という度に子どもの身体を持って道の隅に寄らせます。徐々にプロンプトを減らします。
あるいは、「時計の長い針が4のところに来たら、テレビをつけていいよ」といった指示を出します。こういう指示に答えられるようになると、ずいぶんやりやすくなりますよね。
それ以外にも、皆さんでいろいろ考えてみて下さい。
藤坂
第38号 2007.12.20:「ピアノの教え方」
<プログラム紹介>
今日のテーマ「ピアノの教え方」
ちょうどMLでご質問がありましたので、今日はピアノの教え方をわが家の経験を元にご説明します。
私が娘に楽器を教え始めたのは、幼稚園の年中さんの頃だったと思います。最初は木琴でした。しかしこれはキーボードやおもちゃのピアノでもかまわないと思います。本物のピアノでは最初は少し大きすぎると思います。
1.まず木琴(あるいはキーボードなど)のドレミファソラシドにそれぞれ色違いのシールを貼って、そこに「ド」「レ」「ミ」「ファ」・・・とマジックで書いてやります。文字が読めることが前提です。
このシールはプロンプトですので、子どもがそれぞれの音の位置を覚えるようになったら、少しずつはがしていきます。わが家の場合は、低い方のドとソだけは数ヶ月の間、そのまま貼っておいたように思います。
2.次に最初の曲をバックチェイニングで教えます。例えば「チューリップ」。これを最後の「ミミレレド」の「ド」から教えていくのです。最初はドのところを叩いて見せ、まねして叩いたら(弾いたら)それだけで強化します。それを何度か繰り返し、プロンプトなしでもたたけるようにします。
次に「レレド」と弾けたら強化します。その次は「ミミレレド」です。
このときチェイニングの技術を使います。例えば「レレド」が弾けるようになったとして、次に「ミミレレド」を教えるときは、最初は「ミミレレド」すべてを、大人がバチを叩いてモデルを示すか、あるいは指で指し示すことによって、フルプロンプトします。
次は「ミミレ」までプロンプトします。するとそれまでの練習で「レ」とくれば「レレド」と続くように練習しているので、あとは終わりまでプロンプトなしで弾くことができます。「ミミ」の次に間髪を入れずに「レ」とプロンプトして、行動のチェイン(鎖)を隙間なくつなぐのがこつです。
その後も、大体3音ずつ遡っていきます。「ミミレレド」→「ララソ・ミミレレド」→「ソソミソララソ・ミミレレド」といった感じです。この辺りにじっくり時間をかけます。先を急ぐと、しっかりチェインがつながらないので、いつまで経っても途中で間違えてしまい、いつまでも一曲目が完成しない、ということになります。一曲目に1ヶ月かけるつもりでいて下さい。
3.一曲目が完成したら、二曲目を同じように教えます。やはりなるべく単純な曲がいいです。うちは「ちょうちょ」だったと思います。
二曲目を教えたら、一曲目と混同しないよう、弁別させないと行けません。そうしないと両方のメロディが混ざってしまうのです。「ちょうちょ」だったら「ソミミ」と始まれば、「ファレレ・・・」と最後まで間違えずに続くように、最初は要所要所でプロンプトします。同じく「チューリップ」なら「ドミソ」で始まれば「ドミソソミレドレミレ」と続くように教えます。曲名を覚えさせる必要はなくて、イントロを与えたら、あと間違えずに弾けるようにすればいいのです。
この調子で、ドからド、あるいははみでてせいぜい高いレまでくらいの単純な曲を、5,6曲教えます。「こいのぼり」「とんぼのめがね」「きらきら星」などです。
ここまで木琴で教えていたとすれば、このあたりでキーボードでも弾けるようにします。ただしまだ人差し指一本だけで弾かせます。
最初からキーボードの場合も、ここまでは指一本で教えます。わが家では幼稚園卒業までこの状態でした。
4.次に右手5本の指で弾くことを教えます。わが家では小学一年生になって、授業で鍵盤ハーモニカが始まったので、必要に迫られてようやくこの段階に入りました。
最初はもう一度、ドレミファソの鍵盤にシールを貼ってシールに「ドレミファソ」と書きました。それから親指から小指までの5本の指の爪に、対応する色のシールを小さく切ったものを貼ってやりました。
それによって、親指は「ド」、人差し指は「レ」・・・・というのが子どもにわかりやすくなりました。
次にこれで、最初に教えた簡単な曲をもう一度5本指で教え直します。
例えば「チューリップ」なら、ドからラまでですよね。そのうちラだけは小指で弾くようにプロンプトして、あとは色の指定どおり5本の指で弾かせます。だんだん、指のシールを剥いで、色の手がかりがなくても、親指がド、人差し指がレ・・・という対応を覚えさせていきます。
5.しかしいつまでも5本指が「ドレミファソ」に対応するわけではありません。例えば「ドレミファソラシド」と弾くときは、「ファ」が親指になりますよね。この時の指くぐりがちょっと難所です。「ドレミ」まで弾いたところで、親指に手を添えて、人差し指と中指をくぐらせて、「ファ」を押させます。そのとき、再び親指に例えば赤いシールを貼ってやり、「ド」と「ファ」のところに同じ色のシールを貼ってやると、指くぐりの時の目印になってわかりやすいです。
「ドシラソファミレド」と戻ってくる場合の指またぎも同じ方法で教えます。
あと、鍵盤ハーモニカの場合は、吹きながら弾く、ということを教えなければなりませんが、これはわが家の場合は意外とすんなりわかってくれました。
わが家はこの辺までで、つまり片手演奏で、小学一年を終わりました。
6.一年の時に、5本指演奏が意外とすんなりいき、しかも娘が好きそうだったので、二年のときに近所のヤマハに入れました。「一番優しいベテランの先生を」と指名して、週に1回、ピアノの個人レッスンを受けることにしました。このとき始めてわが家にピアノを購入しました。このときまでは子供用キーボードと、鍵盤ハーモニカを使っていました。
ピアノを始めた頃に、確か楽譜の読み方も教えました。画用紙に大きな5本線を書き、ト音記号を書き、黒い●を画用紙に切り抜いたものを5つほど用意します。
まず5本線の所定の位置に「ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド」と鉛筆で書いていきます。次に●をドの位置に置き、「これは?」と聞いて「ド」と言わせます。
同じように「レ」「ミ」「ファ」・・・などの位置を教えます。
次に●を二、三個使って、「ドレ」「ミソ」「レミレ」などの2,3音の連続を読めるようにします。次は4,5音連続の読みです。
その次に、ピアノテキストの楽譜を読ませます。最初はト音記号の上段だけです。
7.ピアノを始めると、すぐに左手の伴奏が始まります。しかしさすがに最初はとても簡単な伴奏なので、わりとすんなりできるようになりました。そのうちだんだん複雑になってきますが、ピアノの教科書もそのあたりはうまくスモールステップになっています。その通りにやっていくうち、娘は左手のやや複雑な伴奏もこなすようになっていきました。
それからも、四分音符や二分音符の意味や、休符の意味、「フォルテ」「ピアノ」の意味など、教えることはたくさんありました。しかし最初の一、二年は、そんな記号の意味がわからなくても、耳でメロディを覚えさせて、弾かせていました。「フォルテ」や「ピアノ」の強弱を記号を見て引き分けることができるようになったのは、5年生になってからです。
ヤマハに週1回通いましたが、先生が30分のレッスンで娘に教えることができるのはごくわずかなことで、あとは親が宿題を持ち帰り、次までに家で練習させてくる、という方式でした。ですから親が常に付き添いました。
おかげで今では、下手ながらに、ロンドとかワルツ、スケルツォといった曲を弾けるようになってきました。数少ない娘の特技なので、これからも続けていこうと思っています。
以上です。
藤坂
第34号 2007.11.15:「小学校に入ってからのABA」
<プログラム紹介>
今日のテーマ「小学校に入ってからのABA」
このコーナーではこのところ、わが家の娘が3才頃に行なっていたプログラムを紹介していますが、今月はちょっと趣向を変えて、小学校に入ったあと、娘にどんなことをやってきたか、ということを紹介してみます。
2 才からのABAで娘はずいぶん伸びましたが、それでも残念ながら軽度から中程度の知的障害が残ってしまいました。社会性の障害も越えがたいものがありました。いまも、クラスの子供たちとほとんど没交渉で、一緒に遊ぶことはありません。
私は仕事が忙しいのを理由に、小学校に入ると夜の1時間のセラピーもやらないようになってしまいました。あとは妻が専ら学校の勉強を教えて、私は主にピアノとおふろ担当、ということになりました。
ですから、あまり偉そうなことは言えないのですが、そういうご家庭の方がむしろ多いのではないか、と思うので、ご紹介します。
まず幼稚園までは、どんなプログラムをすればいいのか、結構迷いましたが、小学校に入ると、とにかく学校の勉強について行かせなければいけないので、それだけでいくら時間があっても足りなくなり、プログラムで悩む、ということはなくなりました。
私は学校の勉強は妻に任せて、娘の身辺自立に力を入れました。妻はそちらには余り関心がなかったので、私が気にかけざるを得なかったのです。
例えば、娘は幼稚園の時にはもう大も小もトイレでできるようになっていたのですが、大の時におしりを拭くのがあまり上手ではありませんでした。小学校低学年の時に一度教えて、上手になった、と思っていたのに、小学校高学年になってから、まだうまく拭けていない、ということが発覚したので、それをもう一度教えることになりました。
やり方ですが、まずひざの上でトイレットペーパーをたたませます。たたんだペーパーを持たせて、おしりを拭かせます。
このとき、お尻の穴にちゃんと手が届いているか、きちんと拭けているか、が問題です。
まずハンドオーバーハンド(HOH)で、つまり子どもの手を取って、おしりの穴を拭かせます。バッチいのでお尻の穴はさわりませんでしたが、何度もペーパーでさわらせ、正しい位置をさわっているか、子どもを前屈みにさせて後ろから覗いて確認しました。
それから低学年の時にしなかったのですが、高学年になってからはさらに徹底させるために、おしりを拭いてからトイレットペーパーを見させて、うんちが付いているかどうか、確認させることにしました。付いていればほめてあげて、付いていてもいなくても、計3回おしりを拭かせます。
服のたたみ方は体育の時に体操服に着替えるので、その時を利用して教えました。一番難しいのは、たたむことよりも、たたんだあとでその服を手提げ袋にきれいに入れることです。これは今でも余りうまくできません。 娘は着替えた服をぐっと袋につっこむので、袋が膨らんでしまって、机のサイドのホックに掛けると、他の子どもの通行の邪魔になるのです。
外出時は、「ストップ」といったら必ず止まる、「左」と言ったら道路の左端に、「右」と言ったら右端に避ける、と言った交通安全スキルを教えました。 最近になって娘はようやく、そういう指示をしなくても、後ろから来る車の音に気が付いて、どちらかに避ける、ということができるようになりました。これも最初は避けるべき時に声を掛けたり、背中を軽く押すことでプロンプトしますが、徐々にプロンプトを減らしていきます。
まだまだご紹介したいことはあるのですが、もう眠くなってしまったので、今日はこの辺で。
藤坂龍司
第30号 2007.10.18:「3才頃のプログラム(4)」
<プログラム紹介>
今日のテーマ「3才頃のプログラム(4)」
今月も、私の娘が3才の頃にわが家で教えていたプログラムをご紹介します。
今日は、前回から一ヶ月後、娘が3才6ヶ月の頃(98年11月)のプログラムです。セラピーを開始してから、1年4ヶ月が経っています。 この頃は、私は夜1時間しかできなくなっていたので、2,3日分のプログラムを紹介します。
<片方・両方>
くつしたなどで、「片方ちょうだい」「両方ちょうだい」
<ある・ない>
①絵を使って「○○は?」「ある」「△△は?」「ない」 ②顔の輪郭に、目や耳を置いて、「お目々は?」「ある」「鼻は?」「ない」 ③「何がある?」(お皿の中や絵の中にあるものを言わせる。動物や人間の場合は「何がいる?」)
<自分の概念>
うさぎのぬいぐるみを、私が抱っこして見せて、「どう?」と聞き、 「パパがうさぎをムギューしてる」と言わせる。次に娘にうさぎを抱っこさせて、「あやがうさぎをムギューしてる」と言わせる。「なでてる」「お手々つないでる」でも同じ。
<動物の特徴>
鼻が長いのは?首が長いのは?耳が長いのは?羽があるのは?つのがあるのは?
<○○の番>
娘とつみきを交互に積みながら、「次、だれの番?」「パパ」「次、だれの番?」「あや」 お菓子を食べる順番、おもちゃのピアノを弾く順番でもする
<知らない>
「パパ、何持ってるの?」と聞く。分かるときには「○○持ってる」と答えさせる。知らないとき(見せていないとき)には、「しらない。パパ、何持ってるの?」と言わせる。
<対動詞>
「はいて」と「ぬいで」の区別。 靴下を片方だけ履かせておいて、もう一方は足の前に置いておく。「はいて」と言ったら、脱いでる方を履く。「脱いで」と言ったら、履いてる方を脱ぐ。 「着て」「脱いで」 下着のシャツを着せておいて、上着をテーブルの上へ。「着て」といえばテーブルの上の上着を着る、「脱いで」といえば、下着のシャツを脱ぐ。
<たて・よこ>
「たて」と「よこ」の概念を教える <位置>~のところ 「ドアのところに行って」「どこに行った?」「ドアのところ」 「ママのところに行って」「どこに行った?」「ママのところ」
<右・左>
「右」と言ったら右の手を横に出す。「左」と言ったら左の手を横に出す。 最初は手を上に上げさせようとしたが、横の方がすばやくできるので、横にした。二つの概念を弁別させるには二種類の指示をなるべく短い間隔でランダムに出すことが望ましいから。
<方向>
「どっち向いてる?」動物フィギュアで。正解を指ささせ、「こっち」と言う。
<1つ・全部>
「1つ、ここに入れて」「全部、そこに入れて」
<熱い・冷たい>
<絵を描く> 縦線、横線の模倣 主なものは以上です。
藤坂
第26号 2007.09.20:「3才頃のプログラム(3)」
<プログラム紹介>
今日のテーマ「3才頃のプログラム(3)」
今月も、私の娘のプログラムを紹介します。今日は、前回からほぼ一ヶ月後、セラピーを始めてから、1年3ヶ月経った頃のプログラムです。
<音声指示>
入れて・出して、おめめつむって、離して、つかんで、にぎって、おいて、分けて しばらく音声指示は休んでいたのですが、この頃、また新しい指示を追加で教えることに力を入れています。
上級課題で伸び悩んでいたので、従来の課題を横に広げる方に力を入れた、という面もあります。でもこういう日常よく使う動詞のレパートリーを増やすことは、後から考えれば、とても大切なことでした。
<動詞の表出>
サイレンがなってる、煙が出てる、火事だ、お水かけてる、お料理してる、ドアが開いてる・閉まってる、ころんだ、おきた、寝てる、起きた、花をつんでる、ふねをこいでる、顔洗ってる、歯みがきしてる、 これは動作カードや絵本を見せて、その状況を説明させる課題です。
「煙」は絵だけではぴんと来ないようだったので、散歩中に田んぼのたき火を見せて教えました。「煙」は理解したのですが、あれから教えるのをさぼっているので、未だに「煙」と「湯気」の弁別が出来ていません。
<新語>
洗濯ばさみ、ビー玉、車、ポケット、袋、トカゲ、おべんとう、クモの巣、タイヤ 「車」というのは、それまで「ブーブー」と教えていたのですが、そろそろ赤ちゃん言葉から卒業させようと思って、教え直したのです。
2才でセラピーを始めた頃は、いったん教えたものを教え直すなんて出来るんだろうか、ととても心配でしたが、実際にやってみると、割と簡単にスイッチできました。
<動物の身体>
つの、くちばし、はね
<叙述文>
~に乗ってる、~に入ってる、~が来た、~が~をなでてる、~と~がお手々つないでる さっきの動詞の表出、と重なりますが、文の形で実際の動作や絵本などを叙述する練習をしています。 <質問の自発>これ何?誰?何持ってる?
<禁止表現>
たたいたらだめ、噛んだらだめ
<二重形容>
赤い四角いつみき、青い丸いつみき 形容詞を二つつけて名詞を形容させる練習をしています。まずこちらが指示を出して選ばせた直後に言わせると教えやすかったです。(例:大人「赤い四角い積木は?」子ども:正解を選ぶ。大人「これ何?」 子ども「赤い四角いつみき」)
<分配>
一つずつ、二つずつ 積木を数個渡して、お皿数枚の上に、指示した個数だけ分配させる課題です。
<代わりばんこ>
綾の番、パパの番 積木を代わりばんこに積む課題です。大人「次、誰の番?」子ども「綾の番」(言わせてから手を離して、動作をさせる)
<順序>
~の次は?
<短期記憶>
何が入ってる?何した?何がない?
<ある/ない>
テーブルの上に3つくらい、物を置き、「○○ある?」と聞いて、テーブルの上にその物があれば「ある」、なければ「ない」と言わせる。 以上です。
藤坂
第22号 2207.08.16:「3歳頃のプログラム(2)」
<プログラム紹介>
今日のテーマ「3才頃のプログラム(2)」
先月に引き続いて、私の娘の、3才頃のプログラムを紹介します。先月は3才3ヶ月頃のプログラムを紹介したので、今日はその1ヶ月後、3才4ヶ月頃の1日(1998.9.22)を選んで、その日を中心に、それ以前の数週間に何をやっていたか、を紹介しましょう。セラピーを始めてから、1年2ヶ月経っています。
<新語>
つる、けむり、ビル、おばちゃん、じょうろ、まめ、こいのぼり (相変わらず、物の名前を増やしています。デスクで教えたものもあれば、日常生活のなかで教えたものもあります。「けむり」は、まだ湯気と煙を区別できないだろうと思ったので、台所で湯気のことを「けむり」と教えてしまいました。すぐに覚えたのですが、その後、セラピーをさぼったので、いまだに湯気のことを「けむり」と言っています) <概念>子ども/大人 (これ以前に、おにいさん、おねえさん、こども、の区別は写真を使って教えてあったのですが、この頃は、綾(娘のことです)は子ども、パパやママは大人、と言うことを教えたと思います)
<場所>
文房具屋さん (この月に入って、公文の場所カードを使って、パン屋さん、ケーキ屋さん、靴屋さん、果物屋さん、魚屋さん、などを教えました。「コープ」も教えたのですが、これは実際に行って、こっそり写真を撮り、カードにしました)
<動作・文章>
~が入ってる、見える (引き続き、いろんな動詞を教えていますが、この頃になると、動詞単独でなく、名詞+動詞のフレーズの形で教えることも多くなってきました。「お口開けてる」「おめめつむってる」「汗かいてる」「水をあげてる」などです。 (この頃、「見える」という知覚動詞が登場しています。下敷きの後ろにキリンのミニチュアを隠して、いろんなところから、頭やしっぽ、足を覗かせたり、全く隠して見えなくしたりして、「キリン見える?」と聞いて、「見える」「見えない」と答えさせました。その後、いくつかの別の場面に般化させました。後から考えて、とても大切なプログラムです。)
<自動詞・他動詞>
落ちた・落とした (「落ちた」はかなり早く、2歳代で教えたのですが、今度は「落とした」を教えて、「落ちた」と区別させています。例えば綾に積木をテーブルから床に落とさせて、私が「積木が?」と聞き、「落ちた」、「綾が?」と聞いて、「落とした」と言わせます。質問の順序はランダムに入替えます)
<誰が?>
誰が投げた?誰が落とした?誰がなぐった? (「誰が?」の質問に答えられるようにしています) <助詞>「うさぎにチュしてる」 (「を」と「に」の区別を教えています)
<時間>
夜、昼 (この一ヶ月で、昼と夜の区別を教えることに成功しました。やり方は、同じ場所で、昼と夜に写真を撮り、「昼」と言って明るい方に、「夜」と言って暗い方にさわる、という方法です。あとで現実場面に般化させました)
<意志のイエス・ノー>
いる/いらない (先月、叙述のイエス・ノー(「うん」「ちがう」)は教えたのですが、今度は、意志の肯定・否定表現として、「いる・いらない」を教えています。これが出来た後、「いい」と「だめ」も教えました)
<代わりばんこ>
パパの番/あやの番 (積木を積んだり、簡単なゲームをする場面で、「次は?」「パパの番」「次は?」「あやの番」と言わせて、順番交代を教えました) その他には、数や平かな、絵、連続カードなどを教えています。
<綾ちゃんニュース>
「綾ちゃん、お手玉腹筋にはまる」 綾ちゃんは、最近、お手玉腹筋にはまっています。
これは、現北海道教育大学準教授の高畑庄蔵先生が、養護学校教諭時代に考案された方法で、6月の公開講座で教えてもらって、家でも出来そうなので、さっそく始めたものです。 洗濯かごに25個カラーボールを入れて、それを足で挟み、もう一つの洗濯かごを頭の位置に置いて、足下の洗濯かごからボールを1個取っては、寝ころんで、頭のところにあるもう一つの洗濯かごにボールを入れる、というものです。
綾は、これを一往復(全部移し終えたら、反対向きになってまた25個のボールをもとのかごに戻す)するところから始めたのですが、家内が「これはダイエットにいいわ」とすっかり気に入って、勝手に二往復に増やしてしまいました。そうすると、25個×4で、100回腹筋をすることになります。
私がシールを買ってきて、毎日、腹筋をしたらシールをカレンダーに貼るようにし向けたところ(カレンダーの各日付ごとに、小さな丸を書き、その中に「ふっきん」と書いておきます)、綾はそれがすっかり楽しくなったらしく、それから毎日やっています。
最近は、自分の判断でさらに増やして、2往復半、つまり25個×5=125回やるようになってきました。 終わると、「5回やった」と満足げに報告に来てくれます。
秋にはスリムボディに変身しているんじゃないか、と、楽しみにしています。
PS.小学校前の小さなお子さんはまねしないで下さい。
藤坂
第19号 2007.07.26:「3歳頃のプログラム」
<プログラム紹介>
今日のテーマ「3歳頃のプログラム」
今日は、私の娘が、セラピーを始めて1年1ヶ月経った、3歳3か月頃の一日(1998.8.24)のプログラムを紹介します。この期間はちょうど、私が当時勤めていた短大が夏休みだったので、いつもより盛り沢山のプログラムをこなしています。 ここに紹介するのは、私の担当分で、妻はこれとは別に、20種類近いプログラムをこなしています。
セラピー時間は、この当時、一日5,6時間でした。 以下は、私のこの日のセラピーノートからの書き写しです。カッコ内は、今回書き加えた解説です。
<新語>
しっぽ、シール、信号、糸、壁、天井、夜、せき、穴 (この頃、物覚えが速くなってきたので、新しい名詞をどんどん教えています。
この日新たに導入したのは、「シール」と「穴」でした。残りは最近導入したばかりなので、毎日、忘れないように数試行ずつ確認したいと思って、ノートに記載してあるものです。しかし毎日、ここに挙げたすべての名詞を復習できている訳ではありません)
<再強化>
コスモス (これは、以前に教えた名詞を復習していて、忘れていたことに気付いたので、教えなおしている言葉です。この日は「コスモス」をインプットしています)
<要求>
つけて、取って、立っていい? (要求の言葉、いわゆるマンドです。この日新しく教えたのは、「立っていい?」その前の日は「つけて」を教えたので、要復習項目として、この日のノートに載っています。「取って」はその前に教えたのでしょう)
<動詞>
あおいでる (動詞も毎日、少しずつ増やしています。この「あおいでる」は前日に導入したもので、この日はそれの定着を図っています。この日は新しい動詞は導入していません。物の名前は、この頃になると、一日1,2個のペースで覚えていっていましたが、動詞はそれほどスピードが速くなかったし、また動詞の数は名刺に比べればうんと少ないので、名詞に比べれば、ゆっくりしたペースで教えています)
<形容詞>
はやく/ゆっくり、広い (「はやく/ゆっくり」は、数日前から教えている継続項目。「広い」は前日から教え始めた新しい概念です)
<時制>
のんでる/のんだ (この時期は、まだ未来形(のむ)は教えておらず、現在(進行)形と過去形の区別だけです。) <助詞>~をもってる、~をふってる、~にさわってる (これ以前は、「つみき持ってる」などと、助詞抜きの文を言わせていたのですが、この少し以前から、助詞を付けることを教え始めたようです。しかしこの頃にはさらに進んで、次の、2つの助詞を使う3語文に力点が移っています) <~で~を~してる> はさみで~を切ってる、タオルで~をふいてる、かなづちで~をたたいてる (いわゆる「具格」つまり道具を表わす「で」を使って、三語文を話す練習です)
<絵>
○におめめ (簡単な絵を描くプログラムです。この日は、顔の輪郭の中に目を描かせています) <質問の弁別>誰?/何してる?、これ何/色/形/どこ/いくつ (「これ何?」以下は復習項目で、この日は新たに「誰?」と「何してる?」の区別を教えました)
<鳴き声>
からす (知識を増やすプログラムの一環として、この頃、動物の鳴き声を教えていました。この日はカラスの鳴き声「カーカー」を教えたようです。)
<機能>
たたくもの (身近なものについて、「何するもの?」と聞いて、機能を言わせるプログラムです。この日は、かなづちについて、「たたくもの」と教えています)
<分類>
虫/動物 (分類概念も少しずつ増やしています。この日は、数日前から教えている、虫と動物の区別を継続しています)
<ここ/あそこ>
(指示代名詞の使い分けです) 以上、3才当時のプログラムの紹介でした。
藤坂
第15号 2007.06.21:「ピアトレ課題」
<プログラム紹介>
今日のテーマ「ピアトレ課題」
毎月第三週は、ABA家庭療育の様々なプログラムを紹介しています。
今週はわが家で行なっていたピアトレーニングの課題のうち、つみきBOOKで紹介しなかったものをいくつか紹介します。
以下、トレーニングの対象となる発達障害児を「子ども」、トレーニングに参加した健常の子どもを「ピア」、指導役の親やセラピストを「大人」と呼びます。
<後追いする>
健常児は、年長の子どものあとにただわけも分からずくっついていくことがよくあります。そこで年長の子どものすることを見て、観察学習するのです。
しかし自閉症児はなかなか健常のピアの後をついて行ってくれません。そこで健常のピアのあとを自発的に追っていくことを教えます。
1)まずピアが部屋を出て行きます。そのとき最初はピアが子どもに「おいで」と言います。大人が子どもを促してやり、ついて行けたら強化します。ピアと子どもは、別の部屋で用意していた楽しい課題に従事します。
2)「おいで」という声かけを徐々に減らしていきます。
<協力する>
子どもに、ピアと協力して何かをすることを教えます。
例:テーブルを運ぶ
粘土やお絵かきをする場合に、そのために使うテーブルを、別室から運んできます。そのとき、子どもに片側を持たせ、ピアに反対側を持たせます。最初は大人が子どもの側にいて、プロンプトします。特に、途中で勝手に下ろしてしまわないよう、一緒についていて、テーブルを下ろそうとする行動は制止し、持ち続けていたら、数秒ごとに強化します。
例:おそうじする
床に紙くずをばらまいておきます。子どもにちりとりを持たせ、ピアに法規を持たせます。ピアがゴミを集めたら、子どもはちりとりをきちんと床につけ、ゴミを受け取ります。大半のゴミがちりとりの中に入ったら、子どもはちりとりを少し後ろに下げて、ピアが残りのゴミを掃くのをもう一度受け止めます。
<地面ドッヂ>
遊び課題です。四角いエリアを決めて、その中に子どもとピアが入ります。大人がエリアの両側にいて、ボールを子ども目がけて転がします。ボールが来たら避けることを教えます。最後まで当たらなかった人が勝ちです。
<おんぶ>
単純にじゃんけんをして、負けた方が勝った方をおんぶします。負けたときも、素直に勝った側をおんぶできたことを強化してあげて下さい。
<列に並ぶ>
楽しい活動、例えばなわとびを地面近くに渡して、それを順番にジャンプする、という遊びで、列に並んで順番を待つことを教えます。次のような標的行動があります。
①列の末尾に並んで待つ
②列が一歩進んだら、自分も一歩進む
③一番前列に来たら、その活動(例えばなわとびジャンプ)をする 今日はおそいのでこれくらいにします。また機会があれば、紹介します。
藤坂
第11号 2007.05.17:「時計の読み方」
<プログラム紹介>
今週のテーマ「時計の読み方」
ちょうど時計教材のことをMLで話題にしましたので、今日は私流の「時計の読み方」の教え方をご紹介します。
教材の作り方
いきなり実物の時計だと教えづらいので、面倒でも手作りで時計教材を作りましょう。
私が自分の娘に教えたときに作ったものをご紹介します。
1.用意するもの
美濃版の厚手画用紙、黒、赤、青のマジック、鉛筆、ものさし、分度器、コンパス、画鋲、画鋲を反対側で受ける木の円盤
2.まず半径8.5cmの円をコンパスで描き、画用紙から切り抜きます。これが時計盤になります。
3.次に分度器を使って、中心から放射状に、30度間隔で鉛筆の線を引きます。その先端に黒マジックで、文字盤の刻みを入れ、1~12の数字を書きます。これで時計盤の完成です。
4.次に長針と短針を作ります。長針は長さ8.5cm、幅1.4cmの長方形を画用紙から切り取り、片方をとがらせます。短針は長さ7.0cmで、あとは長針と同じです。長針は青、短針は赤にマジックで塗ります。
5.長針、短針とも、とがっていない方の端から1cmのところを画鋲で刺して、さらに時計盤の中心をその画鋲の針で刺します。画鋲はせっかくですから、色の付いた可愛い物を使うといいでしょう。
6.画鋲の針を、時計盤の反対側から木の円盤で受けると、完成です。木の円盤は自分で作ってもいいのですが、私はデパートの外国製の木の玩具コーナーで売っている、数の教材用の木の円盤を流用しました。コルクでは脆すぎて、すぐにダメになります。この円盤をつまんで、針を動かします。
使い方
1.短針の読み方を教える
(1)まずは短針だけを使って、3時、4時、5時といった時刻だけを教えます。
①画鋲をはずして、長針は取り除き、短針だけの時計にします。
②針を1時、2時、3時…の線にぴったり合わせて、「何時?」と聞き、「1時」「2時」「3時」と答えさせます。順番に聞くばかりでなく、5時、2時、9時、4時・・・のように適当な時刻にランダムに針を合わせても、答えられるようにしましょう。
(2)長針を戻した状態で、長針に惑わされず、短針だけに着目して、時刻を答えられるようにします。
①また画鋲を外して、長針をはめ込みます。長針は12時のところに左手で固定しておき、右手で短針だけを動かして、「何時?」と聞いていきます。さっきと同じように、1時、2時、3時…の線にぴったり合わせて下さい。長針の方を見て、「12時」と答えてしまうようであれば、「何時?赤」と言って、赤い短針に注目させます。あるいは指で短針の方を指さして、プロンプトします。短針が12のところに来るときだけは、長針を少し横にずらして、短針が見えるようにします。あるいはいったん画鋲を外して、短針が長針の上に来るようにはめ直します。
②この時計教材で、長針を無視して短針だけに着目して、「○時」と答えられるようになったら、本物の時計でも同じ訓練をします。このときも、短針を○時きっかりのところに合わせて(従って長針は12時のところにあります)、答えさせて下さい。
(3)次に短針が、数字と数字の間にあるときでも「何時?」の質問に答えられるようにします。つまり例えば2時半でも、「何時?」と聞かれたら「2時」と答えられるようにするのです。
①(1)で消しゴムで消した、各時刻の線の中間に書いてあった数字を、もう一度鉛筆で薄く書きます。長針は適当な位置(例えば10時と11時の間)に左手で固定しておいて、右手で短針だけを動かしていきます。
②まず1時ちょうどに短針を合わせて、「何時?」と聞いて「1時」と答えさせます。次に1時と2 時の間に針を合わせて、そこに鉛筆で書いてある数字の1を手がかりに、「1時」と答えさせます。これを他の時刻でも繰り返します。
この段階では、短針が次の時刻、例えば2時の線に限りなく近づいたときまで「1時」であり、2時の線に達してから、やっと2時になるのだ、ということまで教える必要はありません。例えば1時ちょうど、1時ちょっと過ぎ、1時半くらい、1時40分くらいのラインまで、「1時」と言えれば十分です。次は2時ちょうど、2時ちょっと過ぎ、2時半、2時40分ほど、まで「2時」と言わせます。以下も同様です。1時50分くらいのときは、なるべく時間を聞かないようにします。子どもが自発的に言う場合、「1時」と言っても「2時」と言っても正解にしてあげましょう。
③この時計教材で、②が上手になったら、本物の時計に応用させます。本物の時計の針を動かしていき、例えば3時、3時15分くらい、3時半、3時40分くらいまで、「何時?」と聞かれて「3時」と答えられるようにします。4時、5時、6時などについても同じです。
この段階で、急いで「分」まで教えようとせず、数ヶ月、間を空けて、まずはこの「○時」「○時半」の概念をできるだけ日常生活に定着させましょう。 例えば「3時になったらおやつ」とか「7時になったら晩ご飯」といった生活のルーティーンを時刻と結びつけます。時計を見て、おやつやごはんの時刻になるのを待ち遠しそうにするようになったら、しめたものです。
2.長針の読み方を教える
(1)「○時半」を教える。 まずいきなり「○時○分」という正確な読み方を教えようとするのではなく、「1時」「1時半」「2時」「2時半」といった30分刻みのおおざっぱな時間の区切りを教えましょう。
①プロンプトとして、「6」の下のところに小さく鉛筆で「はん」と書いておきます(ひらがなが読める場合)。例えば長針と短針を8時ちょうどのところに合わせておいて「何時?」と聞き、「8時」と言わせます。次に短針を8時と9時の間に、長針を「6」のところに合わせて、「何時?」と聞き、すかさず指さしと言葉でプロンプトして、「8時半」と言わせます。
②「9時」「9時半」「10時」「10時半」などについても、同じことをします。十分に慣れたら、時計を逆行させて、例えば10時から逆に遡っていって、「9時半」「9時」「8時半」という練習もします。最終的にはランダムに、例えば「6時」「3時半」「「7時半」「9時半」「11時」「6時半」…のように。
③本物の時計に般化させます。
(2)「○分」を教える 小学校に入ったら、「○時○分」という正確な時計の読み方を教えましょう。お子さんの学習の進み具合によっては幼稚園のうちから教えてもいいですが、健常児でも幼稚園のうちは時計を正確には読めないのが普通なので、急がない方がいいと思います。
①長針と短針のある状態で、「何時?」と聞いて短針を読めることを確かめてから、画鋲を外して、短針を取り除きます。また時刻を表わす数字の外側に、鉛筆で、分の数字を薄く書き込みます。例えば「1」の外側には5,「2」の外側には10を書きます。そしてそれを手がかりに、長針を5分刻みに動かしていき、「何分?」と聞いて「5分」「10分」「15分」と言わせていくのです。ただし「12」のところには何も書かないようにし、「0分」とは教えません。 慣れたら、徐々に鉛筆の数字を消しゴムで消していき、鉛筆の数字がなくても、「5分」とか「25分」などと答えられるようにします。まだ「12分」「16分」といった1分ごとの刻みは教えません。
②今度は短針も取り付けて、いよいよ「○時○分」という読み方を教えます。例えば7時のところに長針と短針を合わせて、「何時?」と聞いて「7時」と言わせてから、長針を1のところに動かします。そして「何時何分?」と聞きます。ただちに短針を指さしながら、「7時」と言ってやってまねさせ、続いて長針を指さして「5分」と言ってまねさせます。「7時10分」「7時15分」と5分刻みで練習していきます。上手になったら、いろんな時刻に応用します。
③このとき、例えば「7時55分」のように、短針が8時に限りなく近づいているときは、「8時55分」と呼んでしまいがちなものです。この問題を克服するためには、時間を流れとして理解させなければ行けません。本物の時計(やや大きく、針が長くて読みやすいもの)を使って、7時から、10分刻みに針を動かしていき、「7時10分、7時20分、7時30分、7時40分、7時50分、8時」という風に読ませていきましょう。9時台、10時台、など他の時間についても同じ練習をします。 上手になってきたら、7時20分からいきなり7時50分に飛んだり、8時になってからまた10分戻したりして、それでも「7時50分」と言えるようにします。 10 分刻みで上手になったら、今度は5分刻みで同じ練習をします。
(3)「あと何分?」 ここで1分刻みの時計の読み方に進むより、先に「あと○分で○時」という読み方を教えましょう。その方が重要で、生活にも密着しています。 例えば時計の針を6時50分まで動かし、「あと何分で7時?」と聞きます。1つの数字が5分刻みであることを利用して、文字盤の11,12の数字を指さしながら、「5,10。10分」と言ってやり、まねさせます。55分からだと、あと5分、45分からなら、あと15分で次の時刻になる、ということを教えます。
(4)1分ごとの読み方 最後に1分ごとの正確な読み方を教えましょう。これは文字盤に1分ごとの刻みを鉛筆で書き込み、一つずつ数字を書き込んで行きます。最初はそれを手がかりにして、「7時1分」「7時2分」「7時3分」といった読み方を教えます。これは小学校2年生までに出来るようになれば十分です。3年生になったら、学校で、7時5分から7時12分までは何分間か、といった、時計を使った正確な時間の理解を教えます。
藤坂