第6回 新しくなったPECS BOOK
皆様久々の更新です。
2004年2月以来、大変長らくお待たせいたしました。
診断されてABAを始めて、早4年の月日が流れます。
そして4年経った今現在、彼の成長とともにABAに対しての拒絶的反応が現れはじめ、プログラムを少し変更せざるおえない状況にもなりました。
一度はABAをまったくやめて別のプログラムに移行するべきかも検討しましたが、どうにかまた少し良い反応を見せ始めています。プログラムの変更は学校からのものでした。
まず2004年5月のIEPの会議でキンダーガーデンからホームプログラムを打ち切りますと急に言われました。これはうちの子どもだけではなく必要、不必要とは関係なく年齢で打ち切られるというものでした。
うちの子どもはABAを始めた最初の年とその次の年はかなりのスピードでいろいろなことを覚えていきました。
もちろん、レベルは低いですが、IEPで設定したプランのほとんどが一ヶ月するとそのゴールに達してるという結果でした。
学校でのABAのデータと自宅でのABAのデータとでは比べ物にならないくらい自宅でのABAの結果は上回っておりました。
起動に乗っているさなか、資金の問題などでプログラムを切られることに私達は反対をしました。できれば引き続きホームプログラムをあと一年は継続させたいと・・・しかし学校側は年齢のことをあげてなかなか認めてはくれませんでした。
親の意見として、うちの子のような自閉症児は、トランジッションが苦手で急にプログラムを切ってしまうということはいままで一生懸命してきたことが無駄になる可能性があると伝えました。できればいままでデスクワークでしてきたことを般化させる方向で徐々にホームプログラムをなくしていくということでお願いし、学校のほうもそれを認めてくれました。
しかしその般化するということで延長したホームプログラムですので当然、プログラムの内容を変えなければならず、その変化についていくことができずに、癇癪をおこしました。そのためセラピストさんがいろいろ工夫をこらしてくださったのですが、やはり、また起動にのるのに時間がかかりました。
当時、本人が気に入っていたセラピストさんが立て続けに辞めてしまい最終的には総入れ替えになりました。
これもまた慣れるのに時間がかかりました。
ABAを拒否しここまで持ち返すことができたのは新しく入った セラピストさんの若さ、ユーモア、ご褒美の与え方、そして一度基本にもどりプロンプトを増やし、タスクとタスクの間にも休憩を多取り、視覚的プロンプトを増やしました。
そしてようやく起動にのってきましたが・・・
今月2005年1月をもって、えっくんのホームプログラムは終了いたしました。
いままで一生懸命毎日がんばったと思います。
今後もABAは引き続き私達家族が協力して続けていく次第です。
いま4年近くのABAをしてきて、伸び悩んだ時期もたくさんありました。
日によってセラピストさんによって今日できていたことが次の日はできなくなったり、好きだった課題が大嫌いになったり また大嫌いでまったくできなかったことが次の日は完璧だったり・・・
ABAのプログラムは変化させたり工夫をしないと早いうちに子どもがいやがる態度を見せたりすることがわかりました。
本当にできているか、そうでないか、数こなすだけでは図れないものもたくさん出てきました。息子は私やセラピストさんの目で正解を当てようと顔色を見みながら、回答したりすることもありました。また、体調の悪いとき、やる気が起きないときでもできるだけABAは続けました。
そのような時は子ども側にあわせて、簡単で単純作業のドリルに切り替えることや子どもが十分と思えるくらいの休息をとることもしました。
さて、息子ですが、やはり言語のレベルはとても低いです。
以前ご紹介したPECSを使っての言語レベルとPECSなしでの言語レベルは2歳くらいの年齢の差があると思います。
それでも言語の訓練の成果あって、発音がよくなってきたり、PECSを使って要求してきたときに言わせる言葉も少しずつ増えてきました。
以前にもPECSをご紹介いたしましたが、そのころのPECSより更に上達したPECSのコミュニケーション方法などもご紹介したいと思います。
えっくんの新しくなったPECS BOOK
ページごとに種類別になっています。
-PECSのコミュニケーション方法-
現在息子はたくさんのシンボルがわかるようになりました。
ある程度の訓練で、コミュニケーションを獲得しましたが、問題もありました。
PECSに手を伸ばすのに、プロンプトが必要だったり、まったく絵を見ないで、手前にある絵を手早く渡したり、その日によっていろいろです。
現在はプロンプトのフェードアウトともう少し、自発的にPECSを使って、コミュニケーションが取れるように訓練中です。
では、どのようにして訓練をしているかをご紹介いたします。
先日、こちらで開かれた、PECSの講習会に行って 主人がいろいろと教わってきましたのでそれを実際に家でどのようにしているのか書きたいと思います。
まず、息子のレベルはかなり上の方ではあるのですが 、
また振り出しにもどって初期の段階から訓練をはじめました。
-用意するもの-
子どもの大好物(強化子)
その絵のシンボルマーク
大人2人(パートナーA、B)
1.まずたった一枚のシンボルマークからはじめます。えっくんが使っているPECSは約3センチ四方の大きさですが、初めて訓練をされる方は少し大きめのシンボルがいいと思います。だいたい(5センチ四方くらい)
そのシンボルはお子様が一番強化されるものにします。写真でも絵でも結構です。
大好きなチョコレートとか大好きなオモチャとか何でもよいのですが、
できれば、それを見たら必ず欲しがる、手が伸びる物が訓練しやすいです。
用意ができたら、デスクでも床でも子どもが居心地の良いところで構いません。
お子様以外にパートナーを2人、お子様の前にいてPECSと物を交換する人(パートナーA)、もう一人はお子様の後ろについてプロンプト(手助け)をする人(パートナーB)。
パートナーAは自然に振舞いながらも、子どもが好物に手が届くように仕向けます。言葉はかけません。言葉をかけるとプロンプトになってしまいます。
これは自発的な行動をできるだけさせるためにです。
そして、その好物に手が伸びたときに、パートナーBは必要であれば速やかに
子どもの後方から、プロンプトしPECSを持たせパートナーAに渡します。
↓
そのときパートナーAは用意しておいた物を素早く子どものPECSと交換します。パートナーAは決して手を出してPECSをちょうだいという手招きはしません。
↓
そして、交換と同時にパートナーAはその物の名前をはっきり言います。
このときはパートナーAとPECSの距離はごく近くに置きます。
この行動だけで、聴覚・視覚・理解・コミュニケーション・強化子が一度になります。
初期の段階では、その物の名前を言わせたりしなくて良いそうです。うちの子の場合は、エージェンシーからは言わせるように言われていましたがここではPECSを使うと欲しいものがもらえるというコンセプトのを教えるだけでよいそうです。もしも言葉が言えるようであれば、もっと強化をふやすといいでしょう。
このような行動を一日に20回から40回すると良いそうです。 立て続けにではなく一日を通してです。それでも、こちら側の対応を間違えないようにするには パートナーAとBはあらかじめ、訓練をするのがよいと思います。私も主人と息子が寝てから、いろいろな設定を想定して訓練しました。
また、パートナーBのプロンプトも子どもの行動からすばやく読み取り、できれば少しでもフェードアウトしていくようにします。たとえば、最初は向後から腕をつかんで、PECSブックに誘導していたのが少し、腕をPECSブックに近づけるだけにするなどの調節が必要になります。そして、子どもが自発的にPECSに手が伸びて、パートAにPECSを渡したときはほめ言葉ではなく強化子をたくさん渡します。そして、その強化子が何かを言います。言うときにはニコニコとして Happyな感じがではっきりとした口調で言います。
えっくんの場合
ほめ言葉は子どもによっては必要でしょう、
そのときはすべての行動が終了した後がよいそうです。
しかしうちの子の場合は物の名前をなんどもはっきりと聞く訓練が必要なのであえてほめ言葉を使いません。セラピストさんはこのほめ言葉をたくさん使いますがたぶん混乱していたように思います。
この動作を20回―40回することによって、自然とその名詞が耳に入ってくるようになるそうです。次は自分で自主的にPECSを取り、物がもらえることがわかったらすこーしづつ距離を取ってみました。
これは結構あっという間に理解してえっくんは現在、一階の部屋からPECSをとり二階にいる人に手渡すという訓練をしています。やり取りがわかってきたら、少しずつPECSの位置とパートナーAの位置の距離を離します。
パートナーは子どもがあくまでも自発的な行動をさせるために
子どもにわかるように誘導させたらり、声をかけたり、
ちょうだい、何がほしいの?などの合図をここでもしません。
この訓練で、子どもは別の部屋からもPECSが取れるようそして、
伝えたい人のもとにPECSを持ってこれるようにします。
ここまではPECSの基本だそうで、この段階以上に行き
どこかでつまずいたらまたこの訓練をするとよいそうです。
この訓練を2週間くらい続けました。
子どもを誘導して、プロンプトの加減をはかり
そのつど選んだPECSとの交換は、かなりきつい訓練でもありますが
その結果、発語が増えてきています。
Bread、TV、Barney(テレビのキャラクター)などなど・・・。
これはかなりはっきりと何度か言えたので、どうやら効果がありそうです。
PECSではもう何十種類もの要求ができるようになってきています。
1日に100回くらいはPECSをもってきます。
これからもこのトレーニングは学校と協力して続けていきたいと思います。
このレポートを書かせていただいてから、
たくさんの方々からメールをいただいたり、
ご家族のお写真などを送っていただいたり、
とてもうれしく思います。
そしてこれからの励みにもなります。
この場をおかりして御礼を申し上げます。
今後もこのアメリカでまた新しい情報などがありましたら、
お役に立てるかわかりませんができる限り、
お伝えしていきたいと思います。
このようなすばらしい機会を与えてくださった
つみきの会にも感謝しております。
また、ご協力してくださったイラストレーターのYumi Irieさん
ありがとうございました。
えっくんママ
第5回えっくんの学校での様子 2004年
えっくんは現在、9人の自閉症児のクラスの幼稚園に通っています。
先生は1人、エイドさんが4人、とても理想とはいえないクラスの状況ではあります。
クラスはとてもシンプルでドアを開けると生徒一人一人の名前がついた小さな椅子がならべられ、そこに荷物をおきます。
クラスは個別指導ができるように、いくつかの高い縦で区切られ、なるたけ集中できるようになっています。そこでデスクでのABAを朝45分間します。
その壁には一人一人のスケジュールがPECSであらわされています。
スケジュールのボードは色で区切られていて、えっくんはみどり、○○くんは青といった感じで表してあります。時間がくると先生からみどりの紙をわたされます。
それはスケジュールをチャックしてくださいということです。
みどりの紙を指定の場所にいれると一番上にあるスケジュール用PECSを取り、していされた場所に移動します。
学校には週に2回ほど、うちに来るセラピストさんが、様子を見に行ってくれます。(シャドー)
学校でのABAの内容は一人一人まったく違います。
私達が学校にお願いしたことは家で使用しているドリルと教材、内容を統一させることでした。人がかわれば指示の出し方もそれぞれでそれでは聴覚のプロセスに問題がある息子には、理解するのがむずかしくできれば言葉かけや指示は短く、わかりやすく、ということで統一をすることにしています。
そしてサークルタイムといって床にすわり先生を中心にして挨拶をしたり、本を読んだり、歌を歌ったりします。
えっくんはこのサークルタイムが大の苦手で、床に座ることも嫌いでした。集中力もほとんどなく、床に座らせた瞬間に、ひっくり返る事が頻繁にありました。
しかし、毎日の慣れでしょうか?今では座って先生をじーっと見つめたりその内容にも参加して、手をたたいたりするようになりました。
動作模倣や音声指示、音声模倣といった訓練の成果のあらわれだと思います。
何度か学校の様子を見学しに行きました。
とても感動したのは、家では見れない環境の中で、ちゃんとマナーや規則を学んでいる息子を見る事ができました。
給食は外で食べます。狭い体育館の片隅にその日のメニューが用意されえっくんはちゃんとみんなと並んで、トレイをとって自分の好きなものを選び、ちゃんと外まで運んで、お昼を食べていました。
仲良しのお友達がいるようで、その子といつも行動をともにしているようです。
そのお子様は高機能でその子のこだわりがうちの息子といっしょにいることのようです。
うちの息子が学校を休むと、そのお友達も元気がないそうです。
また、一人でいると自己刺激を楽しんでしまうので、なるべくだれかが適切な行動へと導くようにお願いしてあります。
楽しく一日を過ごすえっくんは、バスを降りて私の顔を見るとニコニコして私の首に手をまわしチュをしてくれます。
そして、ドアを開けるとき「オープン ドア」と言いながらドアを開けます。
靴をぬぐと必ず靴箱にちゃんとならべておくことが習慣ずけられました。
学校から帰ってくるとおやつを食べて、一息つくひまもなく言語療法のクラスに週2回、1セッション1時間に連れて行きます。
以前は1セッション30分でしたが、だんだんと起動に乗ってきたあたりから一時間に延長してもらいました。
ここでは、口の周りの筋肉の向上、発音の訓練、言語の理解の訓練などを中心で、はじめたころはほとんど言葉がなかったのでそのころからの様子をご紹介いたします。
-言語療法 2003年~2004年-
ABAで椅子にすわることに成功していたえっくんは(当時4歳)音声模倣が家庭でのABAでやっと出始めたばかりでした。そのころから言語療法に通いはじめます。
言語療法のお教室はとてもせまいお部屋でしたがちゃんと整頓されていてたくさんのおもちゃがおいてありました。
まず先生は椅子にすわるように指示します。
しかし、慣れていないせいか最初の1~2ヶ月はいやがり泣き喚き、変えるころにはサウナから出てきたかのような感じでしたが、通いはじめてから何度目かからパニックはおさまりました。
先生はまず発声練習のまえの準備運動として笛を吹きます。
そしてえっくんにもやってごらんと言い吹かせます。
そしてキャンディを口の前にもっていきます。
えっくんは口の中に入れたいのですが、先生は舌をぺロリと出すことで舌を動かして出る音の訓練をしています。
先生はたくさんの口をつかってあそべるおもちゃを用意していました。
シャボン玉、笛、エコーが聴くおもちゃのマイク、強く吹かないと音がでないおもちゃ風車、あめ、グミ、などなど発声練習の前のウォーミングアップをします。
そして何か重ねたりして作り上げるようなおもちゃを用意します。
うちの子にはいつもドーナッツの形をしていて、すべて大きさが違うおもちゃでそれを大きい順に棒に入れていくというおもちゃを使っています。
先生が一番おおきなドーナッツのおもちゃを取り口にあてます。
そして「ア」といいます。「ア」ときれいな発音でいいます。
また「エ」「イ」「ウ」「エ」「オ」が終わると、もっていたドーナッツをえっくんに渡します。しかしそこで先生は棒の上に手をおいてえっくんはドーナッツが入れられないようにします。そしてえっくんが「IN」入れるというまで手をどかしません。
もしも、息子が癇癪をおこしそうになるとすかさず先生はプロンプトして言わせます。
そしてまた一つのドーナッツをとって、口の横にあて、
「アー」「エー」「イー」「ウー」「エー」「オー」「アー」「オー」次に
「アッア」「エッエ」「イッイ」・・・・・・・
「アップ」「エップ」「イップ」・・・・・・・
「アット」「エット」「イット」・・・・・・・
「アム」「エム」「イム」
そして「ガアー・ガアー ガアー・ガアー」と
痰をはくような声をださせます。そのときは先生はのどのところに手をあてて発声しています。
その後、「カーイ」「ケーイ」「キーイ」という訓練をします。
おもちゃなどをつかうとそれが強化子となりますが
その他に口の近くにもっていくことで目線を口の近くに持って行くようにさせます。
またおもちゃだけではなくて、手を大きく上にあげたりしてリズムをとりながら音をださせています。
つぎに動物のおもちゃをもってきてふくろからだします。
「これは何?」と聞きます。
えっくんは答えられませんので音声のプロンプトと手話で答えます。
例、先生 「これは何」
えっくん 「????」
先生、 「これは豚」と言いながら鼻をつまみます。
先生「 豚はなんて鳴くの」
えっくん 「????」
先生 「ブー ブー」
えっくん 「 ブー ブー」
そしてにわとり、牛、犬、猫、と同じようにした後、先生がさあおかたずけをしましょう。
といい、豚さんさようならブーブー、といいながら袋にいれます。
えっくんは模倣してブー ブー と鼻をつみながら、袋に一つ一つ返します。
型はめパズルもすべて取りはずして先生が一つ取り、口にあてて、「これはなに?」と聞きます。
プロンプトされて「時計」などと答えます。
そして先生からパズルを渡されて、はめて行きます。
これが終わると、動詞の訓練です。
動作の写真を見せて、どちらが食べている人?などと聞くと息子はその写真を指差しします。
いまは70パーセントくらいの正解率ですが、一年前はこのようなこともまったくできなかったです。
このような単純なタスクですが、一年間ほとんどやり方を変えず毎回同じ訓練をしています。
いまでは、数少ない言葉もはっきりとした発音で出るようになってきています。
うちの子は言語に関しては非常にシビアです。
ですのである一定のドリルはこなせても、どこかですすまないのはすべて言語能力が必要とされる課題です。
- 問題行動 -
うちの子は問題行動がいくつかあります。なかなか治せないこだわりもありますが
効果があったものをご紹介いたします。
えっくんは細かい物が大好きです。
それで、自己刺激行動へ発展して、満足するとトイレにポイします。
ポイしたあとは風呂釜のふちにのっかり、その前にある鏡をみることが最近の問題行動の一つでした。
アメリカの家はトイレと流しとお風呂が一つになっています。
この問題行動をどうにかやめさせたくて、主人と話しあい、実行して3日もしないうちにこの行動がおさまったのでご紹介いたします。
オーバーコレクションという方法です。
まず、息子がトイレのドアを開けたら少し様子を見ます。
トイレに行っていれば、軽く褒めます。
もしも、風呂釜のふちにたちあがったら、まず、「降りなさい」と言い、そして「おしっこをしなさい」と指示します。
彼はもちろん、おしっこはしたくないので、ギャーといいながらパンツを下げ、便座に座ります。そして1分くらい座らせて、服を着て、手を洗いなさいと指示をします。
そして電気を消して、ドアをしめさせて、おしましです。
これに対して、褒め言葉はかけず、「はい、おしまい」といいます。
2004年元旦に書いた初日の出
また、ある日、風呂場のドアを開けた瞬間に、クレヨンでものすごい落書きがしてありました。このときも、ポーカーフェイスで「きれいにしましょう」とだけいってウェットナップを渡し、すべてきれいになるまで拭かせます。
そしてトイレに行かせます。
このオーバーコレクションは不適切な行動を治し、適切な行動へ導くといった方法です。
これを数回繰り返しただけで、まったくしなくなり、効果が大いに現れました。
トイレだけでなく、いろいろな場面で活用できると思います。
このオーバーコレクションのおかげで雑巾がけが上手になったえっくんです。
- 家でのセラピー -
どうやらえっくんは学校がある日のセラピーはとても調子が良いのですが土曜日の午前中のセラピーは、不機嫌になるときがあります。
ですので土曜日は外でのセラピーを中心にしています。
では少し課題のご紹介をいたします。現在訓練中の課題です。
- 音声指示 -
だんだんと音声指示が入るようになり、自然な環境のなかでも使うことができるようになってきたえっくんですがなかなか、2段階にいくことがむずかしいようです。
例えば、クレヨンをとって丸を書いてとか1つの指示に2つの動作がある指示を与えると、さいごの指示が入ってしまい、なかなかうまくいきません。現在訓練中ですのでまたできたらその様子をお知らせしたいと思います。
- 写真と文字のマッチング -
写真を机におきます。えっくんは3つほどできますので3枚の写真をおきます。
そしてその名前の文字をえっくんに渡します。
えっくんはちゃんと振り分けて、写真の上におきます。
写真とPECSをつかっての課題です。
上にはベットの写真です
左は「僕」というPECSで 右側はいろいろな動作のPECSがはってあります。
そして指示は「これは何をするもの?」と聞いて
息子が「寝ます」と答えます。
特にうちの子は言語が出にくく、コミュニケーションがはかりずらいのでその部分を必要とする課題でつまずいたままなかなか前に進まなかったのでPECSを使って課題を進めてます。
これがそのときの様子です。
- 受容の動作の訓練 -
セラピストさんの「寝ます」の掛け声で寝る動作をします。
つぎは「食べる」の指示で食べる動作をします
指示は「ジュースで何をするの?」
するとえっくんはPECSで「飲みます」(I drink)と選びます。
そしてセンテンスストラップをセラピストさんに渡すと声をだしていっしょに「I drink]と言います。
こちらの写真の様子は先生が色と物のマッチングの訓練の準備をしているときにえっくんが「僕はトランポリンがしたい」とPECSで選びましたので先生が課題が終わったら「トランポリンをしましょう」と言っているところです。
そして先生がみどりのつみきをみせて
「これはなに?」と指示をだします。
すると
これはみどりのつみきですと、PECSで答えます。
つぎは「何をもっているの?」という指示にPECSをつかってえっくんが答えます。
えっくんは「僕はコップを持っています」と数あるPECSの中から選んで先生に渡します。
そして指差しをしながら、文章を読みます。
- 数 -
数を数えましょうという指示でえっくんは
「ワン・ツー・スリー」と答えます
発音が悪くて、はっきりとは言えないのですが、確実に数えることができます。
このような訓練を毎日こなして少しずつではありますが成長しているえっくんであります。
第4回 手作りで楽しいセラピー
この写真をご覧になってこの子は自閉症とわかりますか?
テレビを見て楽しそうに笑っています。
ママやパパとも遊ばないから自閉症ではないです。
パパのこともママのことも大好きです。
それを言葉にして言うのが苦手なんです。
そしてパパやママも気持ちを子どもに伝えようと必死です。
息子は中度もしくは重度の精神遅滞(知的障害)を伴う、典型的自閉症です。
見ためはごくごく普通の男の子。遊ぶのだって大好きです。
しかし、表現方法がみんなと違います。感じ方も違います。
彼らの特徴や表現方法を自閉症をもつパパやママたちは自分の時間も惜しまず、
必死で理解し、子どもが将来、自立して生きていかれるようにとがんばっています。
車椅子に乗っているわけではない、盲導犬を連れているわけでもない
普通に見えてもハンディを持つ人たちがこの世界にはたくさんいることを・・・・
お友達や家族にこういう子もいるとお話をしてみてください。
かわいそうと思わずに応援してください。
子供を愛する気持ちや子供の能力を
最大限引き出そうとする情熱は誰にも負けない、
それはみんな一緒です。
えっくんが良くなる日まで
渡米してから早いもので一年が過ぎました。
こちらに来たばかりのころ、不安とホームシックでずいぶんと つみきの会の皆さんに勇気づけられ、励まされてきました。
息子、えっくんですが、プリスクールを6月12日で終了し、9月からは キンダーガーデンで一日6時間を過ごす予定です。
この一年を振り返ってみると、いろいろなことがありました。
はじめて、スクールバスに乗っての登下校、セラピストさんを迎えて ABAが始まり、月2回のスタッフミーティング、月2回の学校の先生とのミーティング、週2回の言語療法と、週1回のOTに通っています。
私自身のカレンダーも月曜日から土曜日まで毎日予定がびっしりと詰まっており、忙しい日々を過ごしております。
5月には息子が腕を骨折するという痛ましい経験をさせてしまいましたが ギブスをはめながらも、元気に過ごしております。
この写真は骨折したて病院から帰ってきたときに写した物で痛そうにしております。
現在はギブスにもなれ またお得意のジャンプを開始 いたしました。
さて、前回のレポートから、すでに4ヶ月近くが過ぎましたので、新たに 更新された課題と家庭での様子など一年を振り返りながら写真とともにご紹介させてください。
-積み木の模倣-
写真をみせて、積み木をつんでいきます。
1ページ目
2ページ目
3ページ目
初期の段階では上ようにして一つずつ増やして写真にとり 本のようにページをめくりながら、積んでいきました。
現在では下のような一枚の写真だけで、積み木を積むことができます。
-名前を教えます-
名前を写真とマッチングで教えます。
まずは本人の写真をよういして、下に名前を書きます。
最初は本人の名前だけでできるようになったらママ、パパと字を増やしていきます。
また家族やお友達の写真もかえてマッチングします。
また一文字のマッチングにも挑戦中です。
-種類別の訓練-
お皿に動物、家具、食べ物 などの写真を一枚づついれて たくさんの写真をばらばらにして渡し、「わけてごらん」と指示をだします。
いろいろな振り分けができます。
色やお金、2Dが難しければ3D でやってみましょう。
-色いろいろー
風船を膨らませて、「これ何色?」と 聞きます。
同じ色のカードを 選ばせます。
風船を使った理由は、時間をかけて見る事ができるのと、子どもが喜ぶのでそのまま強化子として使えるからです。
こちらも色を教えます。
トランポリンで飛んだ後、「みどり」と言って、みどりに飛べたら褒めます。
上の写真はホームセンターで安い透明のホースを買ってきて 色のゴムテープで輪にした物です。
ケンケンの練習をしたり 電車ごっこも楽しいですね。
こちらの輪はつみきの会の定例会に出席したときに 会員の方に作り方を教えていただきました。
こちらも色のマッチングですが 指先の運動を兼ねて作りました。
集中力も身につきます。
PECSを使います。
このペン何色?と聞きます。
「それは黄色です」と答えられるようになりました。
できなければ、プロンプトして褒めます。
-♪PECSで音楽♪-
♪幸せなら手をたたこう♪
PECSをつかって動作模倣をいれながら、手をたたいたり、足踏みします。 PECSのトレーニングを楽しくするために、また視覚ですと音のスピードに ついていく事が楽にできました。
上の絵の一部はパステル王国というページで絵をかいていただきました。
http://pastelou.fc2web.com/
もう一曲♪♪♪
♪いちろうさんの牧場で♪
動物の泣き声は発音の練習に適しています。
現在通っています、言語療法の先生は 動物の鳴き声をよく使って訓練をします。
大嫌いだった発音の訓練もこれで笑いながらできるようになりました。
-はさみを使った訓練-
息子ははさみで丸を切るという訓練を学校と家とでしていました。
まず、はさみの持ち方をプロンプトして教えました。
ここまでで5ヶ月くらいかかりました。
やっとはさみを持つ事ができるようになったので、直線に切る訓練をしました。
次に切って途中で止める訓練は直線を書いて、赤く丸印をして そこがストップサインと教えました。
丸の下の緑はスタートサイン赤はストップサイン これは丸を書く練習にも使いました。
またクレヨンを正しくもてなかったのですが、クレヨンを短く折って 使うと、正しい持ち方で書けるようになりました。
学校のIEPの書類の中にはぬりえを2分以上できるようにしましょうなどと 書かれて3ヶ月後に30秒以上、半年後に1分以上、そして一年を通して 2分以上のぬり絵ができるようにと書かれています。
-PECSを使った社会勉強-
えっくんはレストランでは食事ができません。
私達家族はほとんど 外食をしません。
しかし、マックにはこのPECがあれば行く事ができるようになりました。
マックにPECSを持って行きます。
自分でPECSを使ってオーダーをします。
お金も自分で払います
※失敗談!!このPECSを教えてから、毎日のようにマックに行きたがります。
えっくんの教材を少しご紹介させていただきましたが ほとんどが手作りのものです。
セラピストさんと共同でつくります。
初期のころはえっくんのために判りやすい教材というよりは セラピストさんが使いやすい教材を意識して作りました。
楽しいセラピーの中で、息子は最近、自慢げな顔をするときが あります。
できた!という喜び、また間違えないように セラピストさんの顔色をみて、答えを選ぶときがあります。
セラピストさんは無表情を作るのに必死です。
また、セラピー中、表出言語の少ないえっくんですが、 なぜかセラピストさんと会話をしているのうな雰囲気を感じます。
少しでも、ご紹介させていただいた教材からヒントを得て 子どもたちが良くなっていってくれたらと願っております。
第3回 その後
第1回目のレポートから約4ヶ月が経ちました。4ヶ月前の息子はやっと言葉がいくつか出てサイン言語で要求ができるという報告をしました。4ヶ月経った現在、息子がどの様にかわり、毎日のセラピーの様子とともにご紹介していきたいと思います。
セラピストさんがドアのベルをならします。えっくんは日によってとっても喜んでセラピストさんに抱きつく時と、私の手を握ってドアを開けないで・・・とだだをこねるときがあります。
しかし一度セラピストさんが中に入ってくると、普段こだわりで持っているおもちゃをかばんにいれます。するとえっくんは2階にある自分の部屋へと走ってあがり、ちゃんと席についています。
-目あわせ-
セラピーの最初はだいたいこの目あわせの訓練から始まります。
「こっちを見て」1・2・3・・・・
こうして訓練しているうちに、どこから指示をいれてもこちらを見るようになりました。意識をして人と目をあわせるようになりました。目を合わせる時間が長くなった事で次に出される指示も通りやすくなりました。現在は名前をよばれて、見る事ができます。
そして他の指示が通らないときはまずこの「こっち見て」に戻り目を合わせて違う指示をいれます。
-座る-
「座って」は初歩でマスターしなければならない課題の一つだと思います。
食べるときやテレビを見るとき「座って」の指示が通るととてもやり易いです。
病院の待合室でも短い時間でも座る事ができたら、褒めてあげましょう。
また息子がいたずらをしたりしたときも「座って」と指示をいれてやめさせたりします。
座ったら褒められる、これの繰り返しで1秒から10秒、一分から10分と長く座れるようになれます。
さてこのような基本的なことができるようになった息子は現在、このような課題にとりくんでいます。
・目あわせの練習
・つみきの模倣
・物を種類別に分ける
・何と何が属しているかを写真を使って教える
・マッチング
・色を教える
・微細運動
・自分の名前をマッチングで教える
・動作模倣「こうやって」
・指示をいれての動作模倣
・音声模倣
・物を使っての模倣
・PECSの訓練
・遊びを教える
・物の名前づけ
・自助スキル
・待つ事
・イエスとノー
このような課題をいかに楽しく進めていくか、順を追ってご紹介いたします。
-つみきの模倣-
初期ではセラピストさんが2から3つのつみきを積んだりいろいろな形を作り、「こうやって」と指示を出して、つみきの模倣をしていました。
今では6つ以上のつみきの模倣と4つ以上のつみきを写真に取りそれを見せて「こうやって」といって息子が写真どおりに作るという訓練をしております。
-物を種類別に分ける-
動物、乗り物、食べ物、食器、家具などの小さめのおもちゃを使います。
ばらばらにおいたおもちゃを「分けて」と指示をいれてお皿や箱などに分けていきます。最初はプロンプトして褒めてください。
マッチングなどが得意な子は結構簡単にできるかもしれません。
種類に分けたら、かならずその名前をいいましょう。
-何と何が属しているかを写真を使っての訓練-
写真で例えばかさと長靴、ソックスとくつ、というように属すものを教えます。最初は見慣れたものや、子供が使っているものでやると入りやすいです。
-マッチング-
3次元同士のマッチングから2次元同士のマッチングへ。さらに3次元のものと2次元のものとのマッチングと進めていきます。指示は「どれが同じ?」とか「同じものをおいて」などで、これは得意分野ですのが、たくさんさせて、成功率を高め、自信をつけさせるため、また集中力の強化などにできることでも毎回させています。
-色を教える-
黄色いものを一つ机の上において「黄色ちょうだい」と指示を入れます。最初はプロンプトして取らせ、褒めます。色を教えはじめるときには、かならず他の課題中やセラピー以外の場でも「これ何色」と聞きプロンプトして「黄色」などと言わせます。
息子は現在黄色と青がわかる様になりました。
-微細運動-
これに関しては次回の感覚やOTについてで詳しく紹介いたします。
-自分の名前をマッチングでおしえる-
まず本人の写真を用意します。えっくんなら え・っ・く・ん と文字のマッチングからはじめます。指示はマッチングの時と同じで、できたら褒めて、指差しをさせて「えっくん」と言わせます。
これは始めたばかりなので、いずれまたご報告いたします。
-動作模倣「こうやって」-
初期のころはなかなかこれにつまずいていましたが、「こうやって」の意味が分かってからはいろいろな事ができるようになりました。
この動作模倣はこれから先いろいろなところで使えますのでぜひマスターしてください。
-指示を入れての動作模倣-
最初の動作模倣は「こうやって」ですが、つぎは「両手を上げて」「手をたたいて」のような指示をいれての動作模倣をさせます。できなければ、かならずプロンプトして褒めます。
-音声模倣-
初期のころは口の周りの模倣から簡単な単語を訓練しました。現在も発音がわるいので訓練中です。
-物を使っての模倣-
クレヨンでセラピストさんが丸を書いて「こうして」と指示をだします。えっくんが真似して丸を書きます。また粘土で丸を作って「こうして」と指示をだします。
このような訓練で、顔を書くようになりました。
-音声指示-
毎日同じようなことを繰り返し言われてプロンプトされていると段々といわれた事がプロンプトなしで指示が通ってきます。
「座って」もそうですが、先日このようなことがありました。
初めて歯医者に連れて行ったときのことです。大好きなお絵かきセットを持参して、待合室で絵を描かせて「絵上手ね」「いい子でよく待ってるね」、とさんざん褒めまくりました。
そして先生に呼ばれて、「えっくん座って」で座り、「横になって」で横になりました。
そして「口を開けて」と指示をしてわからなかったので、「こうして」といって動作模倣をさせ、すばやく先生が歯を見て終了です。
このような指示が通り般化されるとパニックも少なく物事が済むようになりました。
-トイレトレーニングー
セラピストさんと学校と家庭が協力しあって、トイレトレーニングを始めました。
最初はトイレにも座る事ができませんでした。まずは写真やPECSでトイレに行くと指示をします。この時、セラピストさんはありとあらゆるおもちゃをもっていきます。もちろん水分は事前にいっぱい補給します。
セラピストさん | 息子 | セラピストさん | ||
「ドアを開けて」 | → | あける | → | 「やったあ」 |
「電気をつけて」 | → | つける | → | 「すご~い」 |
「ズボン脱いで」 | → | 脱ぐ(半分) | → | 「上手」 |
「パンツも脱いで」 | → | 脱ぐ | → | 褒める |
「座って」 | → | トイレに座る | → | 思いっきり褒めまくる |
「おしっこしてごらん」 | → | ・・・・ |
セラピストさんはここで持参した おもちゃや楽器を使って歌を歌ったり、 数を数えたりします。
時には、コップに水を用意しておいて、 おしっこと同じように便器に流します。
ここでタイミングよくおしっこをしたら、セラピストさんは飛んだり跳ねたりして褒めます。そして同じように指示をだして手を洗って終了です。できなくても褒めます。もちろん一瞬でも便器に座ったら褒めまくります。
いまのところ自分からトイレとは意思表示ができないのですが、毎回連れて行くとちゃんとトイレでできるようになりました。
とにかくトイレに行くとセラピストさんがもっと面白くなることでトイレを嫌がることなくできるようになってきました。
-イエス、ノーを教える-
この課題はまだはじめたばかりですが、
まず、大好きなお菓子ときらいな長ネギを用意しました。
そしてセラピストさんに「これほしい?」と聞かれて御菓子だと息子は手を出します。その時プロンプトされてイエスといって首を立てに振ります。
また長ネギのときにはノーと言わせて、首を横にふらせる訓練をしています。
(般化)要求をしてきたら、これほしい?と聞きます。
するとプロンプトなしでもイエスと答えられるようになりました。
-遊びでPECS-
動作模倣とPECSを使って歌を歌います。
「幸せなら手をたたこう」
スマイルマークに手をたたく、足踏みをするなどの絵を用意して歌をうたいながら同じ動作をさせます。
最初に動作模倣で訓練しておくともっとやりやすいですね。えっくんはその遊びをしたいとき、ちゃんと選曲することができます。最近は3曲とレパートリーがふえました。
-般化訓練-
セラピーはいつもだいたい息子の部屋と家の前の公園でするのですが
般化させるために毎日セラピストさんがリビングルームに連れてきて絵をかかせたりパズルをしたりします。
最初のころはセラピーが終わったと思っていた息子はパニックになりましたが、現在はまた自分の部屋に何事もなく入っていくようになりました。
現在でも一人にさせておくと自己刺激をして訳のわからない言葉を発しますが、長時間の介入でだいぶ変わってきています。
第2回 言語とコミュニケーション(PECS)
-PECSの訓練開始まで-
今から4ヶ月前までのえっくんは、ほしい物があると私の腕を引っ張って、「ウーウー」といいながら、そのほしい物のある場所まで私を連れて行きました。
そのとき私がえっくんのほしい物を見つけることができれば良いのですが そうでなかった時は、パニックを起こして自分の頭をたたくのです。
愛する我が息子が、自分自身を痛めつけようとしている姿は、とても悲しい何ともいえないもので、親として見ていられない光景です。
どうにかして他の方法でコミュニケーションがとれたら・・・と、セラピストさんと相談し、PECSをすすめられたのです。
PECSを使うことによって、生涯それなしではコミュニケーションが計れなくなったりするのではないかという不安もありましたが、当時のえっくんは言葉もまったくなく、発声といえば相変わらず宇宙語だらけでしたので、どのような手段であっても試してみようと思い、PECSの導入を決めました。
PECSの教材は、我が家のセラピストさんに頼んで作ってもらいました。 できあがったPECSを初めて見たとき、正直息子が理解するにはむずかしすぎるのではないかと思っていました。
しかし友人のお子さんは、PECSを使いはじめてからみるみるうちに三語文までの文章を使った意思表示ができるようになったのです。それを目の当たりにして、うちのえっくんもお話ができるようになってほしいという気持ちが大きくなっていきました。
ここで紹介させていただく「PECSを使ってのコミュニケーションの方法」は私が本を読んだり、講習会にでて学んだ正式なものではありませんが、実際に我が家で実践したことの一部を簡単にご紹介し、みなさんの療育のご参考になればと思っています。
-自家製PECSの作り方-
100円均一などでバインダーを一冊用意します。
写真などを 3センチ四方程度の大きさに切ります。この写真などというのは、写真はもちろん、絵、広告の切り抜きなど、なんでもかまいません。大きさに関しても、これより大きなサイズもありますが、うちでは微細運動の訓練を兼ねて小さめの3センチ四方という大きさにしました。
切り抜いた写真などの裏に補強用として同じ大きさの厚手の画用紙をはり、パウチにかけます。
パウチのフィルム部分を1mmぐらいのこして周りを切ります。
その裏にマジックテープを貼り付けます。
上の写真はバインダーの表紙です。
縦線の部分には絵や写真をはります。下の横線はセンテンスストラップといって文章を作るための場所となります。
上の写真はバインダーを開いた形です。
PECSの使い方を理解してくると、使用する写真や絵が増えてくるので、使用頻度の高いもの以外の絵の保管はここにします。
1ページ目は食物、2ページ目はおもちゃという風にカテゴリー別にしておくとわかりやすいと思います。
-訓練その1「欲しいものを選択する」-
子供の好きな食べ物、おもちゃなど要求のしやすい物の写真や絵を用意します。
うちで使っているPECSの絵はボードメーカー社のものですが、メーカなどにこだわらなくとも、子供がわかりやすい写真や絵で良いと思いますし、初期の段階ではお母さんが書いた絵や写真が良い場合もあるかと思います。
次の写真のように2枚の絵(この場合、バナナとジュース)を貼ります。
事前に絵と同じ実物(この場合、バナナとジュース)を用意して子供が自分で取れない場所にかくしておきます。
そして
「どちらがほしい?」
と質問してほしい方を選ばせます。選ぶことができなければプロンプトして選ばせます。
プロンプトの手段として、始めのうちは二人で行うのが理想です。
一人は子供の前で課題を出し、もう一人は子供の後ろで選択のプロンプトをするのです。
自力で選択した場合も、プロンプトして選択した場合も、選択できたら写真や絵と同じものを渡してあげます。
写真の場合、バナナの絵を選択できれば実物のバナナを渡してあげるわけです
この時かならず褒めて、選択できたことを強化してあげます。
この動作を何度も繰り返し訓練していきます。
上記のような2枚での訓練をマスターしたら貼る枚数を増やしていきます。
うちでは選んだあと、かならずその物の名前を言葉で言わせるようにしています。
-訓練その2「文章を作る」-
訓練がすすんでくると、子供はPECSで選べば好きな物がもらえるんだということが理解できるようになってきます。
5枚ぐらいは確実に要求できるようになったら、次の段階として文章をつくる訓練をはじめます。
長方形にきった厚紙にパウチをかけたもの、またはプラスチック製の硬いもの(写真の場合赤い部分)を用意し、中心にマジックテープを貼っておきます。これをセンテンストラップの上に配置します。
この赤い部分に 「ちょうだい」の絵柄を貼っておきます。
(写真の場合、赤い部分の左側に貼ってある絵)
そして欲しい物の絵を選ばせて、すでに貼ってある「ちょうだい」の絵の前にその絵を貼らせます。これで「~ちょうだい」の2語文の完成です。
このセンテンスストラップをはがして、相手に渡して要求をさせます。(写真の場合、赤い部分の右側に貼ってあるジュースの絵)
このときも、相手に渡すとき「~ちょうだい」と言葉で言わせてから、絵と同じ実物を渡してあげます。
そしてここでも、意思表示できたことを褒めて強化してあげます。
-訓練その3「ペックスブックを遠ざけていく」-
PECSで「~ちょうだい」の要求ができるようになったら、徐々に本人とペックスブックの距離を遠ざけていきます。
たとえば、いつも子供の目の前にあったペックスブックをちょっと離れたところにおきます。
そしてペックスブックがあるところまで行って自分で文を作り、センテンスストラップをもって来れたら褒めてほしい物を渡してあげるわけです。
-訓練その4「待っての訓練」-
さらに訓練がすすんでくれば「待つ」という訓練も入れていきます。
ほしいものを選んでPECSで意思表示したとしても、その場にその要求した物が目の前にない場合などのために、「待つ」という訓練をしていくのです。
子供がPECSで選んだ絵を持ってきたとき、「待って」という大きめの手の絵のカードの上にのせます。これが「待って」の合図です。
そして何秒か待たせます。待つことが苦手な子供の場合は、何か簡単な課題を一つ させてから欲しいものを渡すというところからはじめると良いかもしれません。
このときも待てたことを褒め、強化します。
-PECSの訓練をはじめてからのえっくん-
えっくんはPECSを使った訓練を開始してから、当初想像していた以上の短期間で、かなりコミュニケーションを計ることができるようになりました。
PECSを使うことによって本人の要求が通りやすくなってくると同時に、パニックの回数、私の手を引いての要求などがかなり減ってきました。
手を引いてくる場合も、同時に「ヘルプ」と言葉で言えるようになっています。 言葉の数も少しずつ増えてきています。
最近では
「オープン ドア」(ドアあけて)
「アイ ウォン ジュース」(ジュースちょうだい)
などの2~3語文が自発で出るようになってきました。
言語が増え始めると同時に、こちらからの指示もかなり入るようになりました。
今まではこちらからの指示への理解が少なかっただけでなく、指示されるだけでパニックになっていました。
しかし、現在では30以上の指示がわかるようになり、ちゃんと言われたことを笑顔でできるようになってきました。
最近では飛んでいる鳥を指さして
「バード」
と言ったり、
「何がほしいの?」と聞かれると、それを指差して
「これ」と応えられます。
またクレーンで要求をしてきた息子を無視すると、2階の自分の部屋までいって PECSブックをもってきて
「~ちょうだい」
と意思表示することができるようになりました
4ヶ月前、言葉もまったく無く、奇声ばかりを発していた息子でしたが そのころから比べるとかなりの進歩だと思います。
ここに紹介させていただいた事は現在の息子のレベルに合わせ行っている我が家の訓練の様子です。
より高度な方法や、これとは別のテクニックなどもたくさんあると思います。 いずれにしても、PECSはコミュニケーションをはかる手段としてとてもすばらしい道具の1つだと思います。
第1回渡米そして療育
わが息子えっくんが自閉症と診断されたのは平成13年の5月、彼はまだ2歳8ヶ月 軽度の自閉症から半年後には中度の精神遅滞を伴う典型的自閉症と診断され あれから一年と4ヶ月が経ちます。
あの日から我が家ではいろいろなことがありました。 障害者への理解、世間への反感、日本での療育のあり方、たくさんの人との出会い、つみきの会で知った本当の療育、両親との別れ、度重なる引越し そして渡米。 たった一年と4ヶ月とは思えない日々をすごして、現在カリフォルニア州、にて療育をうけています。
今現在彼が受けているサービスはリージョナルセンター(国からの援助で成りたっている非営利団体)からと学校区からの援助でインホームケア(自宅での療育)を受けています。 どちらも子供の様子を時間をかけて評価し、訓練が必要と判断された子供に提供されるサービスです。 学校側からのサービスの提供もIEP(個別教育計画)が終わってからとなります。 IEPのミーティング前に30~50日間かけてアセスメント(評価)をします。 ですから息子の本格的な療育も最近始まったばかりです。
私がこちらにきておどろいたのは、このようなサービスはあってあたりまえだという こちらの考えで、日本での療育の遅れを目のあたりにしています。 但し、このようなサービスは州によって、地域によって、学校区によって、また子供の様子や親の希望によってだいぶ異なってきます。 ですからアメリカに在住してAutism(自閉症)と診断されても、すぐにこのサービスが受けられるわけではないので、親は自ら学校に出向き学校区と交渉したり、リージョナルセンターに申し出て少しでも多くのサービスをもらおうと必死です。中には裁判をしたりしてそのサービスを勝ち取ろうとする親もいます。しかしながら日本にはまだその勝ち取れるサービスすらない現状なので、国が見直す必要があると思います。
さて息子えっくんは現在特別学級のプリスクールに毎日スクールバスで通っております。 朝7時10分にはバスにのり12時45分に帰宅します。 このクラスは自閉症児専門で現在6人の生徒に先生が一人、介助が5人いらっしゃいます。スケジュールが組まれていて、サークルタイム、プレイタイム、ABA(1時間45分)、ランチタイム、このほかに週2回の言語療法、OT、PEがIEPにそって行われます。また学校で感覚統合や聴覚統合も取り入れています。
では少し、自宅でのセラピーの模様をご紹介いたします。基本となる目合わせ、これは秒刻みでカウントします。 最初は2秒あったら良しとします。 現在では5秒近く目が合うようになりました。
1.座っての指示、最初は椅子の前に立たせて座ってといって座らせていましたが、 現在は椅子から離れていても座っての指示で座るようになりました。
2.マッチングは比較的、得意分野です。 これは簡単なパズルから大好きなレゴの人形を写真にとり手作りパズルや絵カードをつかって、マッチングが上手になりました。 今は2次元と3次元のマッチングができます。
3.Do this! (こうやって)と動作模倣です。 行動療法を始めて8ヶ月間くらいこの動作模倣でつまずいておりましたが、 物を使っての模倣(主に積み木を使っての模倣)がはいってから、2ヶ月くらいで動作模倣ができるようになりました。 これも大好きなレゴの人形を強化子(ご褒美)に使って Do this と指示をだして、パチッと手を一回たたく動作を何度もプロンプト(介助)しながらやりました。できなくてもほめる、絶対にダメという言葉を使わず、 セラピストさんはかならず、Try better と言います。 初めて模倣ができたとき高かったハードルを一つ飛んだような気持ちでした。 今はDo this and this と二つの動作模倣をさせています。
4.音声模倣 ママと言って、というとママといいます。 ここまでは本当に難関の道のりでした。 初めて彼の言葉を聞いたのは彼が生まれて3年と10ヶ月がたっていました。 動作模倣ができて間もなく音声模倣ができるようになりました。 動作模倣の訓練にOral Imitation (口を使った模倣)を何度もしていました。 ジュースと言えなかったら、ジ・ウー・スとくずして言わせています。
5.サイン言語、息子はモア(もっと)、プリーズ(お願い)、オープン(開けて) アイ(私)、ウォント(ほしい)、ドリンクと幾つかのサイン言語ができます。 最初のころはこのサイン言語だけでしたが、今ではちゃんと言葉もそえていえるようになりました。サイン言語だけをしめしたときもちゃんとセラピストさんは おはなしが上手ねと褒めます。GOOD TALKING!!!
他にもまだまだ課題は豊富にあります。 この課題とセラピーがどのように行われ息子がどのように成長していくか また皆様にご報告したいと思います。