体験記
いーさんの体験
我が家の次男は自閉スペクトラム症です。1歳7カ月の時に診断されました。
診断前の1歳6カ月でつみきの会に入会し、セラピーを始めました。
現在は小学2年生、地域の小学校の普通級に通っています。診断前後から、振り返ってみたいと思います。
事の始まりは1ヶ月半健診の問診票。質問事項に、一つも〇がつきません。能天気な私は、その時初めて、「あれ?どうしてだろう?」と疑問を持ちました。そういえば、指差しも、言葉も出ていない。3つ上のお兄ちゃんがいて、赤ちゃんは勝手に成長するだろうと、兄ばかりを優先していた私は、次男のことを大人しくて手のかからない子と感じていて、発達の遅れに全く気づいていませんでした。
迎えた1ヶ月半健診。当日、次男は寝ていて、保健師さんと問診票を確認するだけ。〇がないことに、私「何か、おかしいのでしょうか?」との問いに、「んー、どうでしょう。半年ぐらい様子をみましょうか。」と保健師さん。半年後に電話くれる約束を貰って帰宅しました。(え?そんな簡単に半年も様子見でいいの?)(私の心の声)
数日後、予防接種のため小児科に向かう車の中で、夫に「まだ言葉が出てないって、何かおかしいのかなあ?」と言うと、「…今日、相談してみたら?」と。小児科の医師に指差しや言葉が出ていないことを伝えると、「自閉症とかあるけど…わからないね。」と。(え?医者なのに?じゃあどこでわかるの?)(私の心の声)
帰りの車の中で、夫と会話。私「自閉症とか言われたけど、どうなのかな?」夫「…色々調べたけど、多分、そうだと思う。実は、ちょっと前に気づいてた。」と。(え?気づいてた?何で言ってくれないの?)(私の心の声)
どうやら、夫は母親から指摘されていたようでした。夫も、次男の手のかからなさに違和感がありながら、母親に指摘されて初めて気がついて、ネットで調べたそうです。
私がショックを受けると思い、なかなか言い出せなかったと。(知らなかったのは私だけ?そりゃショックだけど、そんな大事なこと言わないなんて、バカじゃない?)(私の心の声)
その日から、私もネットで検索。自閉症の症状を見ると、次男に当てはまることばかり。次男って自閉症なんだ、と納得。なぜか、すんなり受け入れた私。でも、二日くらいは泣いたんですけどね。
そういえば、保健師さんは半年も様子を見ると言っていた。半年も何もせずなんて、ヤバイ。保健師さんに電話をかける。「自閉症だと思うんですが、どうしたらいいですか?」言葉に出すと涙が止まらなくなった。保健センターでは発達検査の予約がいっぱいで、検査が先になるそう。早く検査できるところを教えてくれて、予約してくれた。(なんだ。できる所があるんだ。私が電話してなかったらほったらかしてたの?)(私の心の声)でも、保健師さんは優しく話を聞いてくれ、迅速に発達検査の予約をしてくれたので、今ではとても感謝しています。
さあ、発達検査まで少し時間がある。何をしよう。次男は名前を呼んでも振り返らない。絵本の読み聞かせも興味なく、すり抜けて逃げていく。コミュニケーションが取れない。どうしたらいいのかわからない。
そんな時に夫が「こんなところ、見つけたんだけど…」と、ネットで調べたつみきの会を教えてくれた。「早期療育」この言葉を知ったのもこの時。早く始めるのがいいんだ。「少しでも良くなる可能性があるなら、なんでもやる。」そう夫婦で決めて、自閉症の診断前だったけど、入会し、DVDとテキスト(つみきBOOK)を取り寄せ、自宅の一室をセラピールームにして、夫婦で見様見真似のセラピーを開始しました。次男1歳6カ月の頃です。
今まで、こちらの呼びかけに無反応だった次男が、お菓子(強化子)ほしさにイスに座る。それだけで驚きました。まずはおわんに積み木を入れることから………。入れれない。(え?こんなことできないの?)(私の心の声)動作模倣も、全くできない。(うそー。なんで?)同じもの同士のマッチングもできない。(一緒にするだけなのに、なんで?)
こんなに色々なことを理解していなかったのかと、驚きと絶望の連続。同時に、このままでは大変と、危機感を覚え、セラピーの日々が始まりました。
今まで次男にどう接したらいいのか、教えたらいいのかがわからなかったのが、つみきBOOKを見て、この子にも教えることができる方法があるんだと、とても心の支えになりました。
この頃、予約してもらった発達検査を受け、1歳7カ月で医師に「まだ1歳7カ月で診断できるかっていうところだけど、診断できますね。自閉スペクトラム症です。」と。(先生、はっきり言うねー。わかっていたよ、こちらも診断受けるつもりで来ているよ。本当なんだね、ありがとう)(私の心の声)
覚悟していたけれど、改めて医師の口から診断名を聞くと、心にドーンと重たく響きました。(本当は受け入れられないの。)でも、早期に診断してくれた医師に、とても感謝しています。そして、その医師はABAセラピーも応援してくれました。「今からセラピーしてると、よくなるよ。ただ、家でセラピーをしていると、孤立しがちだから、専門家(セラピストさん)に来てもらった方がいいよ。」と。これでセラピーする覚悟も決まりました。
つみきの会のDVDとテキストで、見よう見まねでセラピーをしていましたが、なかなかうまくいかず、NOTIAのセラピスト勉強会のデモに参加しました。そこで初めて藤坂さんに会いました。(うわさ通り?目が鋭い。でも、とても優しそうな人だ)(私の心の声)
セラピストさん達もとても真剣で優しく、褒めてくれる(お祭りみたい。こちらまで嬉しくなる)。そうか、褒めて強化するってこういう風にするんだ、と勉強になりました。しかも、今まで親のセラピーでは、手を挙げる動作模倣ができなかったのですが、藤坂さんの手にかかると、あれよあれよと、できるではありませんか。次男の手と藤坂さんの手を合わせたところから、少しずつ手を挙げていき、最後は自分のみで手を挙げてる状態に。(すごい、そんな方法あるの?)(私の心の声)魔法にかかったみたいでした。
藤坂さんに「音声模倣に入る前に、動作模倣、マッチング、音声指示をしっかりやるように」と言われ、2歳になるまで繰り返し練習しました。
次男は幼く、癇癪もあり、セラピー中に眠くなったりして、長時間はセラピーができませんでした。兄が幼稚園に行っている間の午前中にセラピーをしました。セラピー以外の時間はリビングで指差しの練習をしました。数少ない、興味をもった物を手の届かない所に置き、指差しさせてから取ってあげる、を繰り返しました。発声も極端に少なかったので、食事中、一口ごとに発声させてから食べさせていました。
癇癪や自傷行為(頭を床に打ち付ける)もありましたが、消去につとめました。その時は長く、不安に感じましたが、今ではなくなったので、消去してよかったと思います。
デスクでのセラピーのみではなく、1歳9カ月頃から、市の集団療育にも行ってみました。体操やお遊戯、絵本の読み聞かせなどありましたが、次男はできることが少なく、理解も興味もなく、参加できません。参加させようとすると、癇癪を起こしたり。職員さんは無理に参加させなくていい、というスタンスでしたが、私は癇癪にはひるむことなく、プロンプトして参加させていました。
何か相談しても「そうですかー」としか言わない職員さん。(話聞いてくれるだけ?何か提案ないの?)(私の心の声)次男はまだ、集団では学べない、と感じました。
夫婦でセラピーを続け、どの課題も苦労しましたが、2歳過ぎて少しずつ言葉が出てくるようになりました。(取っての「て」、ちょうだいの「だい」など)その頃、NOTIAのセラピストさんに来てもらえることになりました。どの課題をしようか、指針を示してくれたり、できるようになったことを一緒に喜んでくれたり、今まで夫婦だけでやってきたことが、セラピストさんが来てくれるようになり、気持ちがとても楽になりました。
会話もある程度できるようになり、年少さんから幼稚園に入園。兄が同じ幼稚園だったので、制服の着脱や朝の会など練習した上で入園しましたが、ふたを開けてみると、まったく先生の言うことを聞かず、座っていられず、教室から脱走してばかり。専属の補助員さんをつけてくれていましたが、だめでした。園にお願いして、一時期私が付き添い(シャドー)しました。離席しようとすると止め、座れると褒めて強化しました。園でできないことは、家でも練習しました。そうすると、少しずつ座れるようになり、離席もなくなり、参加できるようになりました。
幼稚園に付き添って感じたことは、先生たちは指示のみで強化がほとんどなく、次男にはとてもわかりづらかったのだろうと思いました。まだまだ言葉の理解も弱かったので、かわいそうなことをしてしまった。もっと早く付き添ってあげればよかったと、後悔しました。
先生たちはとても次男によくしてくれ、可愛がってくれました。先生が次男に対して困っていることはないか、こちらから聞くようにし、コミュニケーションを取りました。
年中さんでも補助員さんはついてくれましたが、私の付き添いは必要なくなりました。
まだ理解力も弱かったのですが、仲の良いお友達ができて、楽しく幼稚園に通えました。
年長さんになると、補助員さんは見守り程度で、大体のことは皆と同じようにできるようになっていきました。
年少の時、スイミングの習い事をさせたかったのですが、集団指示が通りにくく、並ぶこともできなかったので、しり込みしていました。同じ自閉症児をもつ先輩ママさんに、「とりあえず体験行ってみたら」と背中を押してもらい、体験に行ってみると、幼稚園よりコーチの言うことを聞いている。並ぶことは苦手だったけど、手の空いているコーチが並べるよう補助してくれたりと、うまく対応してくれ、通うことができました。年中から公文や体操教室など、少しずつ習い事も増やしていきました。
そして小学校入学。不安がありながらも、普通級を選択しました。次男の不安が強く、最初のうちは登校しぶりもありましたが、仲の良いお友達ができ、少しずつ慣れていきました。
休み時間は、体操教室で好きになった鉄棒で遊び、鉄棒仲間ができたり、放課後はお友達のお家にゲームをしに行ったりもしています。
セラピーで、何度も繰り返し練習して少しずつできることが増え、成功体験を積んできたからか、できないこと(ソフトボール投げやサッカーなど)があると、「どうやったらいい?教えて。」と練習する子になりました。うまくいかなくても自分で練習するところや、人からのアドバイスを受け入れて実践するところは素晴らしく、尊敬しています。
まだ幼いところがあり、お勉強やメンタル面も不安がありますが、お友達と楽しそうに登下校している姿をみると誇らしく、セラピーを続けてよかったと、心から思います。
追伸
息子は小学校中学年になりました。お友達もでき、学業もついていけていて、普通級で楽しく過ごしています。