体験記・会員の声

えっくんレポート

第5回えっくんの学校での様子 2004年

えっくんは現在、9人の自閉症児のクラスの幼稚園に通っています。
先生は1人、エイドさんが4人、とても理想とはいえないクラスの状況ではあります。

クラスはとてもシンプルでドアを開けると生徒一人一人の名前がついた小さな椅子がならべられ、そこに荷物をおきます。

クラスは個別指導ができるように、いくつかの高い縦で区切られ、なるたけ集中できるようになっています。そこでデスクでのABAを朝45分間します。

その壁には一人一人のスケジュールがPECSであらわされています。

スケジュールのボードは色で区切られていて、えっくんはみどり、○○くんは青といった感じで表してあります。時間がくると先生からみどりの紙をわたされます。

それはスケジュールをチャックしてくださいということです。
みどりの紙を指定の場所にいれると一番上にあるスケジュール用PECSを取り、していされた場所に移動します。

 学校には週に2回ほど、うちに来るセラピストさんが、様子を見に行ってくれます。(シャドー)

学校でのABAの内容は一人一人まったく違います。
私達が学校にお願いしたことは家で使用しているドリルと教材、内容を統一させることでした。人がかわれば指示の出し方もそれぞれでそれでは聴覚のプロセスに問題がある息子には、理解するのがむずかしくできれば言葉かけや指示は短く、わかりやすく、ということで統一をすることにしています。

そしてサークルタイムといって床にすわり先生を中心にして挨拶をしたり、本を読んだり、歌を歌ったりします。

えっくんはこのサークルタイムが大の苦手で、床に座ることも嫌いでした。集中力もほとんどなく、床に座らせた瞬間に、ひっくり返る事が頻繁にありました。

しかし、毎日の慣れでしょうか?今では座って先生をじーっと見つめたりその内容にも参加して、手をたたいたりするようになりました。

動作模倣や音声指示、音声模倣といった訓練の成果のあらわれだと思います。

何度か学校の様子を見学しに行きました。
とても感動したのは、家では見れない環境の中で、ちゃんとマナーや規則を学んでいる息子を見る事ができました。

給食は外で食べます。狭い体育館の片隅にその日のメニューが用意されえっくんはちゃんとみんなと並んで、トレイをとって自分の好きなものを選び、ちゃんと外まで運んで、お昼を食べていました。

仲良しのお友達がいるようで、その子といつも行動をともにしているようです。
そのお子様は高機能でその子のこだわりがうちの息子といっしょにいることのようです。
うちの息子が学校を休むと、そのお友達も元気がないそうです。

また、一人でいると自己刺激を楽しんでしまうので、なるべくだれかが適切な行動へと導くようにお願いしてあります。

楽しく一日を過ごすえっくんは、バスを降りて私の顔を見るとニコニコして私の首に手をまわしチュをしてくれます。

そして、ドアを開けるとき「オープン ドア」と言いながらドアを開けます。

靴をぬぐと必ず靴箱にちゃんとならべておくことが習慣ずけられました。

学校から帰ってくるとおやつを食べて、一息つくひまもなく言語療法のクラスに週2回、1セッション1時間に連れて行きます。

以前は1セッション30分でしたが、だんだんと起動に乗ってきたあたりから一時間に延長してもらいました。

ここでは、口の周りの筋肉の向上、発音の訓練、言語の理解の訓練などを中心で、はじめたころはほとんど言葉がなかったのでそのころからの様子をご紹介いたします。 

-言語療法 2003年~2004年-

ABAで椅子にすわることに成功していたえっくんは(当時4歳)音声模倣が家庭でのABAでやっと出始めたばかりでした。そのころから言語療法に通いはじめます。

言語療法のお教室はとてもせまいお部屋でしたがちゃんと整頓されていてたくさんのおもちゃがおいてありました。 

まず先生は椅子にすわるように指示します。

しかし、慣れていないせいか最初の1~2ヶ月はいやがり泣き喚き、変えるころにはサウナから出てきたかのような感じでしたが、通いはじめてから何度目かからパニックはおさまりました。

先生はまず発声練習のまえの準備運動として笛を吹きます。
そしてえっくんにもやってごらんと言い吹かせます。

そしてキャンディを口の前にもっていきます。
えっくんは口の中に入れたいのですが、先生は舌をぺロリと出すことで舌を動かして出る音の訓練をしています。

先生はたくさんの口をつかってあそべるおもちゃを用意していました。
シャボン玉、笛、エコーが聴くおもちゃのマイク、強く吹かないと音がでないおもちゃ風車、あめ、グミ、などなど発声練習の前のウォーミングアップをします。

そして何か重ねたりして作り上げるようなおもちゃを用意します。

うちの子にはいつもドーナッツの形をしていて、すべて大きさが違うおもちゃでそれを大きい順に棒に入れていくというおもちゃを使っています。

先生が一番おおきなドーナッツのおもちゃを取り口にあてます。

そして「ア」といいます。「ア」ときれいな発音でいいます。

また「エ」「イ」「ウ」「エ」「オ」が終わると、もっていたドーナッツをえっくんに渡します。しかしそこで先生は棒の上に手をおいてえっくんはドーナッツが入れられないようにします。そしてえっくんが「IN」入れるというまで手をどかしません。

もしも、息子が癇癪をおこしそうになるとすかさず先生はプロンプトして言わせます。

そしてまた一つのドーナッツをとって、口の横にあて、

「アー」「エー」「イー」「ウー」「エー」「オー」「アー」「オー」次に

「アッア」「エッエ」「イッイ」・・・・・・・

「アップ」「エップ」「イップ」・・・・・・・

「アット」「エット」「イット」・・・・・・・

「アム」「エム」「イム」

そして「ガアー・ガアー ガアー・ガアー」と

痰をはくような声をださせます。そのときは先生はのどのところに手をあてて発声しています。

その後、「カーイ」「ケーイ」「キーイ」という訓練をします。

おもちゃなどをつかうとそれが強化子となりますが

その他に口の近くにもっていくことで目線を口の近くに持って行くようにさせます。

またおもちゃだけではなくて、手を大きく上にあげたりしてリズムをとりながら音をださせています。

つぎに動物のおもちゃをもってきてふくろからだします。

「これは何?」と聞きます。

えっくんは答えられませんので音声のプロンプトと手話で答えます。

例、先生 「これは何」

えっくん 「????」

先生、 「これは豚」と言いながら鼻をつまみます。

先生「 豚はなんて鳴くの」

えっくん 「????」

先生 「ブー ブー」

えっくん 「 ブー ブー」

そしてにわとり、牛、犬、猫、と同じようにした後、先生がさあおかたずけをしましょう。

といい、豚さんさようならブーブー、といいながら袋にいれます。

えっくんは模倣してブー ブー と鼻をつみながら、袋に一つ一つ返します。 

型はめパズルもすべて取りはずして先生が一つ取り、口にあてて、「これはなに?」と聞きます。

プロンプトされて「時計」などと答えます。

そして先生からパズルを渡されて、はめて行きます。

これが終わると、動詞の訓練です。

動作の写真を見せて、どちらが食べている人?などと聞くと息子はその写真を指差しします。

いまは70パーセントくらいの正解率ですが、一年前はこのようなこともまったくできなかったです。

このような単純なタスクですが、一年間ほとんどやり方を変えず毎回同じ訓練をしています。

いまでは、数少ない言葉もはっきりとした発音で出るようになってきています。

うちの子は言語に関しては非常にシビアです。

ですのである一定のドリルはこなせても、どこかですすまないのはすべて言語能力が必要とされる課題です。 

- 問題行動 -

うちの子は問題行動がいくつかあります。なかなか治せないこだわりもありますが

効果があったものをご紹介いたします。

えっくんは細かい物が大好きです。

それで、自己刺激行動へ発展して、満足するとトイレにポイします。

ポイしたあとは風呂釜のふちにのっかり、その前にある鏡をみることが最近の問題行動の一つでした。

アメリカの家はトイレと流しとお風呂が一つになっています。 

この問題行動をどうにかやめさせたくて、主人と話しあい、実行して3日もしないうちにこの行動がおさまったのでご紹介いたします。

オーバーコレクションという方法です。

まず、息子がトイレのドアを開けたら少し様子を見ます。
トイレに行っていれば、軽く褒めます。

もしも、風呂釜のふちにたちあがったら、まず、「降りなさい」と言い、そして「おしっこをしなさい」と指示します。

彼はもちろん、おしっこはしたくないので、ギャーといいながらパンツを下げ、便座に座ります。そして1分くらい座らせて、服を着て、手を洗いなさいと指示をします。

そして電気を消して、ドアをしめさせて、おしましです。

これに対して、褒め言葉はかけず、「はい、おしまい」といいます。

2004年元旦に書いた初日の出

また、ある日、風呂場のドアを開けた瞬間に、クレヨンでものすごい落書きがしてありました。このときも、ポーカーフェイスで「きれいにしましょう」とだけいってウェットナップを渡し、すべてきれいになるまで拭かせます。

そしてトイレに行かせます。 

このオーバーコレクションは不適切な行動を治し、適切な行動へ導くといった方法です。

これを数回繰り返しただけで、まったくしなくなり、効果が大いに現れました。

トイレだけでなく、いろいろな場面で活用できると思います。
このオーバーコレクションのおかげで雑巾がけが上手になったえっくんです。

- 家でのセラピー -

どうやらえっくんは学校がある日のセラピーはとても調子が良いのですが土曜日の午前中のセラピーは、不機嫌になるときがあります。
ですので土曜日は外でのセラピーを中心にしています。

では少し課題のご紹介をいたします。現在訓練中の課題です。

- 音声指示 -

だんだんと音声指示が入るようになり、自然な環境のなかでも使うことができるようになってきたえっくんですがなかなか、2段階にいくことがむずかしいようです。

例えば、クレヨンをとって丸を書いてとか1つの指示に2つの動作がある指示を与えると、さいごの指示が入ってしまい、なかなかうまくいきません。現在訓練中ですのでまたできたらその様子をお知らせしたいと思います。

- 写真と文字のマッチング -

写真を机におきます。えっくんは3つほどできますので3枚の写真をおきます。

そしてその名前の文字をえっくんに渡します。

えっくんはちゃんと振り分けて、写真の上におきます。

写真とPECSをつかっての課題です。

上にはベットの写真です

左は「僕」というPECSで 右側はいろいろな動作のPECSがはってあります。

そして指示は「これは何をするもの?」と聞いて
息子が「寝ます」と答えます。

特にうちの子は言語が出にくく、コミュニケーションがはかりずらいのでその部分を必要とする課題でつまずいたままなかなか前に進まなかったのでPECSを使って課題を進めてます。

これがそのときの様子です。

- 受容の動作の訓練 -

セラピストさんの「寝ます」の掛け声で寝る動作をします。

つぎは「食べる」の指示で食べる動作をします

指示は「ジュースで何をするの?」

するとえっくんはPECSで「飲みます」(I drink)と選びます。

そしてセンテンスストラップをセラピストさんに渡すと声をだしていっしょに「I drink]と言います。

こちらの写真の様子は先生が色と物のマッチングの訓練の準備をしているときにえっくんが「僕はトランポリンがしたい」とPECSで選びましたので先生が課題が終わったら「トランポリンをしましょう」と言っているところです。

そして先生がみどりのつみきをみせて
「これはなに?」と指示をだします。

すると

これはみどりのつみきですと、PECSで答えます。

つぎは「何をもっているの?」という指示にPECSをつかってえっくんが答えます。

えっくんは「僕はコップを持っています」と数あるPECSの中から選んで先生に渡します。

そして指差しをしながら、文章を読みます。

- 数 -

数を数えましょうという指示でえっくんは
「ワン・ツー・スリー」と答えます

発音が悪くて、はっきりとは言えないのですが、確実に数えることができます。

このような訓練を毎日こなして少しずつではありますが成長しているえっくんであります。