えっくんレポート
第10回 えっくんはもう10歳
いつもえっくんレポートを読んでくださっている皆様、
大変長らくお待たせいたしました。
2002年から始まったえっくんレポート
今回で第10回目、なかなか更新できていませんが
時が経つのは本当に早いものです。
えっくんはもう10歳、診断されてから早7年半が経ちました。
内容ぎっしりの7年半、いいこともわるいこともいっぱいありました。
10歳はまだ小学校5年生ですが、アメリカでは小学校は5年生を終了後
中学校にあがる地域もすくなくありません。
えっくんの住んでいる地域もそうですので、来年は中学生になります。
えっくんが中学生なんて考えられないし考えたくもない
しかしあっという間に来るんですね。
子供の成長はうれしいですが、なんだか非常に複雑です。
私はいままでを振り返って後悔することも多分にありますが、ABAの訓練をしてたことは本当によかったと思っていますし、これからも続けていくつもりです。
しかももしもしていなかったときのえっくんを想像すると怖いくらいです。
何よりも学習するという環境を作れたことは、10歳になったいま
教えやすくなったということは事実です。
そしてえっくんは私の話していることのほとんどを理解しています。
ただ10歳の男の子はパワフルかつ、えっくんは多動、かつ彼はスポーティで細い体ではあるのですが、かなり力が強いです。
そして反抗期!自閉症!反抗期!自閉症
ア~ンド
反抗期!
こんなとき、もしわが家で問題行動への対処方を知らなかったら
どうなっていたか、考えただけでも恐ろしくなります。
というか過去の小さな問題行動で訓練しておいてよかった?!
えっくんに指導する私たち家族ではあるのですが、日々同じように家族も学んでいるというのが本当です。(かなり苦戦するときもあります)
ですので、えっくんが11歳になったとき、12歳になったときそれはそのときでまた私たちもいろいろ勉強していることでしょう。
ただ、その勉強は少し先回りしておくともっと早いうちに、変な行動がこだわりに変る前に抑えることができると思います。
現在、国からの援助で受けているのは、ABCスクールというコンサルタントからセラピストさんが月曜日から木曜日まで学校が終わってから2時間半のセラピーをしにきてくれます。ABCスクールは自閉症のための特別な学校で、ホームセラピーのセラピスト派遣もしてくれます。
えっくんのセラピーですが、この年齢で少しずつ考えなければならないのが彼の将来と自立。まだ10歳と言っても、彼の学ぶスピードを考えたら決して遅くない。そこで、自立中心のプログラムを作り、課題分析TA(Task Analysis タスク・アナリシス)という方法でえっくんに指導しております。
さてTA(課題分析)とはどのようなプログラムでしょうか、
この方法は現在わが家に来ているコンサルタントから指導を受けて、いくつかの課題に成功したのでご紹介したいと思います。
まず、彼の出来そうな簡単な項目をあげます。そして徐々にハードな項目も将来のターゲットをあげておきます。身辺自立向けの本などを参考にされてもいいし、私たち大人の普段必要な行動をとりあげていってもいいと思います。
たとえば
歯を磨く、髪の毛をとかす、テーブルを拭く、
このような動作は生活していく中でとても必要なことなので
ぜひ、一日朝起きてから私たち親がいないことを想定して
課題をかきたしてみてください。
その中で近い将来、もしくはいま必要なこと、できたらいいなあと思われることなどをひとつ選抜します。(簡単なものがいいです)
さてそれをパパとママまたはお兄ちゃん、お姉ちゃん、協力してくれる人
たちとチームミーティングを開きましょう。家族の協力が必要です(できれば)
そしてこのような簡単な表を作ります。
例として髪の毛をとかす
タスク | 日付 | PP | PPH |
指示(髪をとかそう) | |||
1ブラシを右手に撮る | |||
2左側の髪の毛を上から下にとかす | |||
3右側の髪の毛を上から下にとかす | |||
4後ろ髪を上から下にとかす | |||
5前髪を上から下にとかす |
できるだけ一つの行動を細かく書き出します。
書きだしたら一度それにそって行動してみましょう。
歯を磨くなどかなり長い行動になっていきます。
そして指示を一度だけだします。
「えっくん!髪の毛とかそう!」
するとえっくんは洗面所にいきます。
指定の位置のところからくしを取り出します。
ここでPPと書かれているのはPhysical Prompt 完全にプロンプトします。
ABAなどをされているとプロンプトとう言葉をよくつかいますが手助けという意味です。このプロンプトはなるたけ本人の背後からおこないます。
PPHとはPartial Physical Prompt完全ではなく少しの手助けになります。
模倣のようなプロンプトは、あまり好ましいヘルプではありません。
子供によってはこのプロンプトがないとできなくなることもあるので
自立を対象としたプログラムでは極力使わないようにします。
TAの指導方法は、最後の方から教えてすぐ終わらせる、これは自分でできたという達成感を与えて褒めて終わらせることによって、次も頑張ろうと思わせるやりかたもあります。または最初から表通りやる場合もあります。
ここで子供が間違えてしまった場合はバックステップと言って
正しく行われていた場面からもう一度やり直しをさせます。
何度か繰り返していくと、子供もこの順番がわかってきます。
ところどころでプロンプトが必要でなくなったらそこは自分でさせます。
TAプログラムの基本は助言なし(声をかけない)で行います。
終了したらほめます。強化子はABAと同じです。
上記にあるチェックリストにどの場面でどちらのプロンプトをつかったか
チェックして書き込みます。
ですので、チェックを見れば一人でできる部分とそうでない部分がわかり
どの場面ではプロンプトをしなくていいかまた必要かがわかります。
またPPHの場合は少し間を置いて本人が習得したかどうかを確認しながら様子をみます。
タスク・アナリシスの良さはすべての行動が統一されているので
教える人がかわってもこの表にしたがった順番で教えていくことができます。
場所が変わって学校でも先生の協力でできることもあるかもしれません。
さてこのようなプログラムが組まれているえっくんですが、髪のけをとかす、雑巾を洗う、テーブルを拭く、洗濯物をたたむ、など少しではありますが、できるようになりました。
できるようになったというのは1指示でプロンプトなしで行動ができるということです。
ただまったくきちんと私がするようにはできませんが、それはもっとこれから数をこなすことによって改善されると思われます。
現在彼にとってはとてもハードな歯を磨くと一人でシャワーを浴びるをタスク・アナリシスでがんばっております。
この課題は表にしても2ページにもなってとてもむずかしいタスクです。
でも必要なことなので少し時間をかけてやってみようかと思っています。
こちらのかわいいイラストは私の親友イラストレーターのErikoさんが描いてくださいました。ありがとうございます。
それともう一つ国からの援助でえっくんは空手を習っています。
これも最初はどうなることかと不安でした。
でも、2回3回と連れていくうちに、順番を待つようになってきました。
何度もサンドバッグに飛び乗ってサルのようにぶる下がっていたのですが
ようやくそれをしても褒められない、他のことをした時の方が
みんなの反応がよいと気がついたのでしょうか?
だいぶ空手らしくなってきたように思います。
こちらのクラスは全員自閉症の子です。かなり大勢くるのですが
みなさんそれぞれ、楽しそうにがんばっています。
さて、10歳の超がつく多動の男の子、しかももれなく自閉症くん
いろんなことをしてくれました。
元気いっぱいの男の子。
本当だったら学校から帰ってきたらかばんをほおりなげ、外で暗くなるまでお友達と遊びたいでしょう。
でも彼は家に帰ってきて、お友達もなく、セラピストさんがくるわけです。
どんなにストレスがかかるか、自分に置き換えたらたまらなくいやではないでしょうか?
それをいかに楽しく、いかにストレスがかからない関わり合いをするか
こちら側の努力なのでしょう。
またえっくんは体操教室にも通っております。どうもスポーツは好きなようです。
最初習い始めたころはトランポリンが大好きだったので
そこばかり行っていたのですが、やっと最近ではすべての課題をこなすことができました。
細くて背が高いわりには筋肉質で、力も強く、母としてはちょっとうらやましいのですが、私よりも絶対背は高くなるし、力だってもっともっと強くなるはず、でもえっくんは私とじゃれあって遊ぶのが大好き。
この体いつまでもつことやら!
えっくんの言葉ですが、なかなか表出言語の伸びは少ないのですが
歌がうまくなってきました。音楽って結構課題に使えます。
一曲ですが、次女のあっちゃんが一緒に毎日何回も歌ってくれた結果です。
♪I love you
You love me
We are a happy family
With a great big hug and a kiss from me to you
Won’t you say you love me too.♪
このフレーズを歌ってくれます。
えっくんの声を聞くとホッとします。私の活力になります。
えっくんの成長をまたお知らせできたらと思います。
いつも読んでくださってる方々ありがとうございます。
次は更新、早めにするぞ!?!
えっくんママ
PS.ひとつ元気になる話
現在お子様の中では多動で療育困難なお子様もたくさんいらっしゃると思います。うちの子もそうでした。
ソファの上でジャンプしたり、買い物にも連れて行けず、
追いかけるだけで大変でした。
セラピーだってなかなか集中できないし、座ることもきらいだったえっくんです。でも10歳になったいまは他の子とくらべれば落ち着かないところもありますが、ちゃんと一緒にコンサートに出かけて、2時間ちかく席をたたずに座って、まわりが拍手すれば一緒に拍手をします。
大好きなキャラクターが出てきてあっ!とういう表情をしたえっくん
子供は少しながらに成長しています。良い方にも成長します。
3-4年前はこんなこと考えられなかった光景です。
レストランでもちゃんと座って食べます!
今年は脳波の検査もしちゃいました。
私たちがあきらめないことが成功につながります。
もう一つ!お出かけのときは強化子バックを子供に持たせましょう。
リュックみたいの。
あの重みが落ち着いたりするというOT(作業療法)で習いました。
アメリカの療育の中ではOTはなくてはならない科目になっております。
ペンをもって筆圧を強くしたり、はさみで線の上を切ったりということだけではなく、学習しやすいように落ち着かせるということもしています。
また次回のえっくんレポート、早めに更新しますね。!
読んでくださってありがとうございます。